上場: では、どういう行為をピックアップしていきますか?
流相: そこなんですよね、僕が悩むのは・・・
どの行為をどういう基準でピックアップすればいいのか?
上場: まずは、甲の全ての行為をピックアップしていくことから始めると良いと思いますよ。
その中には、全く刑法的に問題とならない行為もあるかもしれませんが、それは検討の結果、書かないとすればいいわけで。
その上で、甲の行為に何罪が成立しそうかを分析していくのです。
神渡:(1)行為のピックアップと、
(2)ピックアップした行為への刑法的評価の2段階に分けて分析するということですね。
上場: そういうことです。
慣れれば、刑法的に問題となりそうな行為だけをピックアップすることができるようになりますが、慣れない間は、神渡さんが言った(1)と(2)を意識的に分けて分析する必要があると思います。
流相:(2)ピックアップした行為への刑法的評価で悩むことが多いのですが、何かコツはありませんか?
上場: そうですねぇ・・・
たとえば、次の架空の事例で考えてみましょうか。
甲がナイフでAの脇腹を刺して、その結果、Aが死亡した。
上場: 流相君、どう分析しますか?
流相: えっと、殺意はあったのでしょうか?
上場: それは分かりません。
流相君が初めてAの死体を発見した捜査官だと想定して甲の罪責を検討してみてください。
流相: え~?
甲に殺意があれば殺人罪(刑法199条)ですが、殺意がなければ傷害致死罪(刑法205条)ですし・・・
上場: まず、Aの死体を発見した場合、何罪の検討からしますか?
流相: えっと・・・
重い罪からですか?
上場: 通常はそうでしょうね。
流相: ということは、殺人罪から検討します。
上場: 殺人罪の構成要件該当性から検討するのが筋だと私も思います。
(1)殺人の実行行為があるのか?
(2)因果関係はあるのか?
それを充たしたのであれば、
(3)故意があるのか?
故意の有無は、客観面から推認するという面もありますからね。
流相: なんだか、あまり馴染めません。
通常は、問題文に故意の有無などは記載されていますから。
阪奈: でも、捜査機関は、死体発見をきっかけに捜査を始めるわけで、どの構成要件に照らして捜査すべきかをまずは決めないと捜査できないと思うわよ。
殺人じゃないかと疑えば、殺人罪の構成要件に照らして、殺意の有無を捜査していくので。
神渡: 殺人罪の構成要件というフィルターを通して捜査をしていかないと事実を解明できないですよね。
だから、早い段階で問題となりそうな構成要件をピックアップしておく必要があるのですね。
流相: 問題となりそうな構成要件のピックアップはどうすれば良いのでしょうか?
---次回へ続く---