上場: 次に分析する国家行為は何ですか?
流相: 次は、政治ビラ配布行為に住居侵入罪(刑法130条)の適用を検討する裁判所の法解釈行為です。
阪奈: つまり、裁判所による、住居侵入罪の構成要件の解釈行為ということね。
流相: 僕、そう言ったけど?
阪奈: そうだけど、なんか分かりにくい言い方なのよ!
流相: ふん(怒)
神渡: 立川事件(最判平成20年4月11日)では、住居侵入罪の解釈が問題となっていますね。
阪奈: そうね。その点が問題となることは明白ね。
上場: あなた方が被告人の弁護人であるとした場合、弁護人として住居侵入罪の解釈においてどう憲法論を展開しますか?
流相: そうですねぇ、
被告人は、平穏に立ち入っていますから、その立入行為は「侵入」に該当しない、と主張することが考えられます。
阪奈: それは住居侵入罪の保護法益を住居の平穏と捉える平穏説に立つということね?
流相: そう。
阪奈: それが憲法論とどう関係するの?
判例は(新)住居権説で固まっているのよ?
流相: だからその(新)住居権説を批判するんだよ。
阪奈: それは分かるけど、憲法的価値に基づくと住居権説ではなくて平穏説になる、という論理を説明しないとダメよね?
流相: ・・・
まぁ、そうですけど・・・
阪奈: 説明できるのかしら?
流相: さ、さぁ?
阪奈: 私としては、(新)住居権説に立った上で、弁護していった方が良いと思うの。
流相: どうするの?
阪奈: そこをどう考えるのかを考えるのよ!
流相: 禅問答じゃないんだから・・・
阪奈: 私、この判例の事案で感じたんだけど、被告人としては、一番に自衛隊員にイラク派遣の問題点を知って欲しいのよ。
だから自衛隊宿舎の各戸の玄関ポストに政治ビラを配布したの。
でも、その行為が住居侵入罪に該当するとして起訴された。
他の商業ビラは逮捕すらされていないのに・・・。
つまりは、政治ビラ配布行為については、管理権者が被害届を提出しているけど、他の商業ビラ配布行為については管理権者は被害届を出していないのでしょうね。
それって、管理権者に都合の悪い政治的ビラは見たくない、だから宿舎内に立ち入ってそのビラを配布して欲しくない、という管理権者の意思の表れよね?
流相: そうだね。
阪奈: 被告人からすると、そこの部分が一番不満なのよ!
見たくない、知りたくないことに目をつぶる、目をつぶるだけじゃなくて排除する、というその思考に被告人としては一番怒りを感じるんじゃないかしら?
流相: たしかに。
・・・だから?
阪奈: だから、立入りが管理権者の意思に反すれば「侵入」に該当するという「侵入」の解釈を、政治的言論の優越的地位の観点から絞っていくべきじゃないかしら?と思うの。
---次回へ続く---