富公:「処分」該当性判断基準として“ファイナル性”を検討しましょう。
流相:“ファイナル性”?
聞いたことあるような・・・(クイズ番組?)
富公:しつこいですが、再び、判例の「処分」概念を確認しておきましょう。
流相:あっ、はい。
公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの(最判昭和39年10月29日)
流相:をいいます。
富公:この「処分」概念で、“ファイナル性”はどの文言のことでしょうか?
流相:(他にそれらしき文言はないからなぁ・・・)「直接」という文言でしょうか?
富公:そうです。
「直接」が“ファイナル性”のことです。
今までは、
・公権力主体たる国家の行為が
・国民に個別的法効果
をもたらすかどうかの判断基準を検討してきました。
流相:はい。
公権力主体たる国家の行為が国民に個別的法効果をもたらすことが分かれば「処分」に該当する、でいい気がしますが・・・。
さらに“ファイナル性”を検討する必要があるのですか?
富公:実は、この“ファイナル性”が結構やっかいな議論なのですよ。
そもそも、「直接」ということはどういうことですか?
神渡:“直接”という言葉は、間に何も介在しない、ということかと思います。
富公:そうですよね。
間に何も介在せずに、じかに接するということです。
ということは、
行為と法効果が因果的に直結していること、つまり、
行為→法効果
という図式が成立するのが「直接」の意味ですね。
神渡:では、
行為1→行為2→法効果
という因果関係の場合、
行為1と法効果との間に「直接」性はないということになりますね。
富公:そうです。
行為1と法効果との間に行為2が介在していますからね。
そうすると、
行為1→行為2→法効果
の場合、行為1に「処分」性は認められませんね。
神渡:行為1と法効果との間に直接性がありませんからそうなります。
行為1と法効果との間に因果関係はありますが、間接的なので直接の法効果をもたらさない、よって「処分」に該当しない、ということですね。
富公:そうです。
では何故、間接的な因果関係では「処分」に該当しないのでしょうか?
流相:う~~ん・・・
阪奈:(なんでかしら?)
富公:そもそも抗告訴訟はどういう訴訟でしたか?
神渡:行政庁の行為を対象とする“行為訴訟”です。
富公:抗告訴訟の典型である“取消訴訟”で見てみましょう。
取消訴訟では行政庁の行為を取り消します。
それは何故でしょうか?
神渡:それは、行為から生じた効果を無いことにするためだと思うのですが・・・
富公:そうです!
つまり、取消訴訟は、行為から生じた法効果を取り消すための訴訟なのです。
塩野先生は次のようにおっしゃっています。
取消訴訟とは、もともと、行政処分の法効果を消滅させるために作られた制度である・・・(塩野宏『行政法Ⅱ[第五版]行政救済法』(有斐閣、2010年)100頁)
流相:(えっ、そうなの?)ペラペラペラ・・・(あっ、本当だ!書いてある・・・。基本書はちゃんと読まないといけないなぁ・・・)
富公:そうすると、
行為1→行為2→法効果
の場合、行為1を取り消しても、法効果を消滅させることはできませんよね?
神渡:はい。
この法効果は、行為2から生じていますから。
富公:ということで、「処分」といえるためには、行為と法効果との間に直接性が必要となるのです。
神渡:?
ですが、富公先生、直接性のことを先ほど、“ファイナル性”と整理されていました。
“直接性”と“ファイナル性”は違う気がするのですが・・・
富公:おっ!
良いところに気がつきました。
---次回へ続く---