富公:“公権力主体”の要件はあまり基本書にも書かれていない部分ですが、“契約”と“処分”を分ける要件として重要ですので、是非今日で押さえておいてください。
いよいよ、他の「処分」要件に進みましょう。
しつこいですが、もう一度、判例の「処分」概念を確認します。
公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの(最判昭和39年10月29日)
富公:この「処分」概念のうち、「公権力の主体」性の意味と該当性判断基準は既に検討しました。
次に検討するのは、「公権力の主体」たる国・公共団体の行為から、国民の権利義務の形成・範囲の確定が認められること、という要件です。
これは、一言で言うと、
“国民”への
“個別的法効果”
があるということです。
いや失礼、一言ではないですね。
要件としては、3つに分けた方が分析しやすいですね。
どう分けますか?
阪奈:(1)「法効果」があること
(2)「国民」への法効果であること
(3)「個別的」法効果であること
に分けると良いかと思います。
富公:阪奈さんの言う通りですね。
では、(1)「法効果」の存在から検討しましょう。
今度は、建設業法を使いましょう。
建設業を営もうとする者は、原則として、都道府県知事か国土交通大臣の「許可」を得なければなりません(建設業法3条)。
では、都道府県知事(以下では、便宜上、許可主体を都道府県知事に限定しておきます)の「許可」に法効果はあるのでしょうか?
流相:えっと・・・
う~ん・・・
(許可の法効果って何だろう?)
富公:そもそも「許可」とはどういう概念ですか?
神渡:一般的に禁止しておいて、その禁止を個別に解除するのが「許可」です。
富公:そうですね。
“一般的禁止の個別解除”
これが「許可」のポイントです。
「許可」がないとどうなるのですか?
神渡:許可を得ていないということは、一般的禁止が個別に解除されていない、ということですから、無許可での営業は禁止されていることになります。
禁止されたことを行うことは違法です。
富公:そうです、そうです。
とてもスムーズに議論が進んでいますよ。
ということは、「許可」の法効果は?
神渡:適法に営業ができる、ということです。
富公:では、適法に営業ができる、という許可の法効果が建設業法に規定されていますか?
流相:ちょっと待って下さい・・・
・・・許可を受けなければならない。(建設業法3条1項柱書本文)
流相:という文言はありますが・・・
はっきりと、許可があれば適法に営業ができる、という規定は見あたらないような気がします・・・。
富公:そうですね。
そのように明示した規定はありませんね。
ですが、逆から見ると、許可の法効果について規定した条文があるんですよ。
流相:???
“逆”ですか?
富公:そうです、“逆”です。
今は許可があった場合の話をしていましたね。
その“逆”を考えればいいのです。
神渡:あっ、
不許可になった場合を考えるのですね?
流相:不許可になった場合の法効果を規定した条文ってありましたっけ?
---次回へ続く---