流相:不許可になった場合の法効果を規定した条文ってありましたっけ?
富公:不許可の場合、どういう法効果が生じましたか?
神渡:先ほど、私が言ったのですが、不許可での営業は禁止されるという法効果が生じます。
富公:そうですよね。
許可なしでの営業が禁止されるということは、許可なしで営業しようとする国民に対してどういう権利関係が生じるのでしょうか?
神渡:禁止、つまり、するなという“義務”が生じると思います。
富公:そうなんです、“義務”が課されるはずなんです。
ということは、許可なしで営業した者に対して“義務”を課している条文がないかを探せば良いんですね。
流相:許可を受けないで営業した者に罰金を科すという条文があります。
第四十七条 次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだ者
一の二~三 省略
2 省略
流相:が、
許可無しで営業した者に対して“義務”を課している条文ではない気がします・・・
富公:この条文をもう少し分析してみましょうか。
この条文は、許可なしで営業した者に罰金を科しているわけですが、何故罰金を科すことができるのでしょうか?
流相:それは、許可を受けて営業せよ、と言っているのに、許可を受けないで営業したからです。
ん?
あっ!
許可制を採用している建設業法の下では、国民は、許可を受けないで営業をしてはならない、という義務を負っています。
その義務に違反したから罰金が科されるんですね。
ということは、建設業法47条1項は、許可なしで営業した者に対して、営業をするな、という義務を課している規定なんですね。
富公:流相君の言うとおりです。
良い分析でしたよ。
逆に言うと、
許可を受けないでした国民の行為に、罰則があれば、許可をするという国家の行為に法効果がある
ということです。
ということで、「許可」には法効果があることが分かりましたね。
神渡:しかし先生、今、不許可の場合の法効果について検討しただけです。
それが何故、「許可」の法効果になるんですか?
富公:なるほど、そういう疑問をもたれた方もいるかもしれませんね。
しかし、簡単なことですよ。
許可と不許可は、コインの表裏と同じなのですから。
「許可」には、
・申請を認める場合(この場合は許可)と、
・申請を認めない場合(この場合は不許可)
の2つが含まれているのですから、不許可に法効果が認められるのであれば、許可にはその反対の法効果が認められるのです。
神渡:(なるほど)
分かりました。ありがとうございます。
富公:では次は
(2)「国民」への法効果であること
を検討しましょう。
---次回へ続く---
初めて質問させていただきます。
本文中に
許可と不許可は、コインの表裏と同じであって、
「許可」には、
・申請を認める場合(この場合は許可)と、
・申請を認めない場合(この場合は不許可)
の2つが含まれているから、不許可に法効果が認められるのであれば、許可にはその反対の法効果が認められるのです。
とありますが、自分の理解力不足で理解できません。
どうして、「許可」には許可と不許可が含まれるといえるのでしょうか?
そして、それは講学上の撤回と対をなす行為に法的効果が認められ、処分にあたるとの理屈と同じなのでしょうか?
willer様
コメントについ先ほど気がつきました。
大変申し訳ございません。
大変鋭いご指摘ですので、遅ればせながら、回答させていただきます。
国家に“許可権限”があるということは、申請された行為が許可要件を充足しているか否かの判断権(要件充足判断権)が国家にあるということです。
「許可」「不許可」は、この“許可権限”に基づく国家の要件充足判断権行使の結果出されるものです。
「許可と不許可は、コインの表裏と同じ」だという記述は、「許可」も「不許可」も“許可権限”に基づき出される結果という点で、コインの表裏だと言いたかったわけです。
私の言葉が足りなかったことをお詫び申し上げます。
まずは、これをもって、ご質問への回答とさせていただきます。
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