流相: 本問で問題となっている国家行為がどの政教分離規定に該当するか、ね。
これは簡単でしょ!
公金支出の89条前段!
阪奈: いきなりそう結論するよりも、まずは問題となっている国家行為が何かを検討しないと!!
神渡: たしかにそうね。
流相: 本問で問題となっている国家行為は、B村によるA寺への助成だろ?
つまりは、公金支出の問題だ。
阪奈: そうみることも可能ね。
流相: え?
他にあるの?
阪奈: 問題文には、
A寺には特別に助成を行いたい。
阪奈:とあることから、国家による特権付与(20条1項後段)を検討する価値はありそうね。
流相: それはそうかも。
他はもうないだろう?
さすがにB村によるA寺への助成が「宗教的活動」(20条3項)に当たる可能性はないよな?
阪奈: 分からないわよ~。
神渡: 公金から玉串料を支出した行為が「宗教的活動」にあたるかを検討した愛媛玉串料訴訟があるから。
流相: そうか、その判例があった…。
どうすればいいのやら…。
難しいじゃないか!
政教分離だけの問題だから簡単かと思ったのに…
神渡: でも、私は、この問題は「宗教的活動」該当性の問題ではないと思う。
公金からの助成と公金からの玉串料奉納はまったく意味が違うと思うから。
流相: でも、でも、どちらも同じく公金の支出だよ?
愛媛玉串が公金支出が「宗教的活動」に該当するかどうかを検討したのであれば、同じく公金支出である本問でも「宗教的活動」該当性を検討すべきなのでは?
神渡: たしかに公金支出という点ではどちらも同じなのだけど、愛媛玉串と本問では次の点で大きく違うと思う。
・玉串料の奉納は、それ自体が宗教色を帯びた行為
・助成は、宗教的に中立な行為
神渡: 同じく公金支出であっても、公金支出自体が宗教色を帯びた行為かどうかで違いがあるので適用条項も違う…
流相: な、なるほどぉ。
たしかに言われてみればそうかも。
ん?ということは、「宗教的活動」該当性は、宗教色がある行為に適用されると考えるわけだ。
阪奈: それに関しては今回は置いておきましょう。
「目的・効果」基準の射程の問題とも絡む大問題になりそうだから。
いずれにしろ本問では、神渡さんが言ったように、20条3項の問題ではなく、89条前段の問題となるわね。
流相: なんだ、結局俺が最初に言ったのが正しかったんじゃないか!
阪奈: あのねぇ…
法律は結論が正しければいいというわけじゃないでしょ?
結論に至る過程も重要なんだから。
流相: そうだったけ~~?
阪奈: ちょっと、ふざけない!!
ま、結論の妥当性ばかりを重視する必罰主義の行為無価値論者には分からないことかもしれないわね!
流相: 今のは聞き捨てならない!
僕個人を批判するならまだしも、行為無価値論をバカにするようなことを言うのは許せん。
結果無価値論だって、結論の妥当性確保に負けて論理を曲げることがあるだろ?
阪奈: あんたこそ、結果無価値論をバカにしてるじゃない!
なんなのよ!!
神渡: まぁまぁ、二人とも止めましょう。
今は刑法ではなく憲法の問題なんだから、行為無価値も結果無価値も関係ないでしょ?
阪奈: そうね…
神渡さんの言う通り!
本問に戻りましょう。
89条前段の検討をするということね。
問題となる国家行為は具体的には何かしら?
流相: だからさっき言ったじゃないか!
B村によるA寺への助成だよ!
阪奈: だからどの助成なのか?と聞いてるの。
流相: どの、って言われても…
神渡: 本問で、助成は3つ。
---次回へ続く---