流相: 【法律関係の性質決定】の判断はどうすれば身につくのでしょうか?
阪奈: あんたも懲りないわねぇ・・・
自分で考えるということはできないの?
流相: 身につけ方のコツを知っておくことが重要だろ?
上場: それは、契約であれば、典型契約の【冒頭規定】(大村敦志『典型契約と性質決定(契約法研究Ⅱ)』(有斐閣、1997年)40頁)をしっかりと理解しておくことです。
流相: 【冒頭規定】ですか?
初めて聞いたような気が・・・
どういうものでしょうか?
上場: たとえば、売買契約の初めの条文を見てください。そこにはこう書いてあります。
(売買)
第555条
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
上場: この規定が、典型契約としての売買契約の【冒頭規定】と呼ばれる部分です。
各典型契約の冒頭にある規定であることからそう呼ばれています。
この冒頭規定から、典型契約としての売買契約がどういう要件を充たさないといけないかが分かります。
阪奈:(1)財産権移転合意と
(2)代金支払い合意
のことですね。
上場: そうです。これら2つの合意がなければ、典型契約としての売買契約の成立が認められないことになります。
ですから、契約では、当事者がどの典型契約の合意をしたのか?冒頭規定へのあてはめが出発となるのです。
冒頭規定へのあてはめをするためには、冒頭規定を他の典型契約の冒頭規定と比較して相違を押さえておく必要があります。
流相: ですが、何故冒頭規定にあてはめる必要があるのですか?
民法では、基本的に私的自治が妥当しますから、当事者の合意内容をしっかり認定していって当事者の合意にあった規律をすればいいようにも思うのですが?
上場: そういう場面が必要となることももちろんあるのですが、出発点はどの典型契約に該当するか?なのです。
考えても見てください。当事者の合意は当事者毎に様々です。個別にすべての合意を認定することは効率が悪すぎます。おそらく裁判所はパンクするでしょう。
まずは、
既存の法的カテゴリーにあてはめる(大村・上記『典型契約と性質決定』171頁)
上場:という操作をして、それによって適用されるべき規範を冒頭規定以後の規定から導くわけです。
流相: えっ?
典型契約の冒頭規定にあてはまればその典型契約に規定されている権利義務規定がそのまま適用されるということですか?
---次回へ続く---