阪奈: 検閲ではないわよね。
Bは表現することができているわけだから。
だから、「萎縮効果」をもたらすことは絶対的に禁止されるというわけではない…
不採用の理由が憲法的に許容されるのであれば、その不採用が「萎縮効果」をもたらしたとしても違憲とはならない。
神渡: ということは、Bを不採用とした理由が憲法的に許容されるのか?というのが問題となるわけですね?
払猿: そういうことになりますね。
流相: Bを不採用とした理由?
それは、A市におけるY採掘事業に関して反対意見を持っていたからですよね?
払猿: それは…
阪奈: いくらなんでもそういう理由で不採用にすることは無理でしょう!
本音はそうだとしても、表向きは別の理由を持ち出すでしょうよ!
問題文では、A市は、Bが
Y対策課の設置目的や業務内容に照らしてふさわしい能力・資質等を有しているとは認められなかった
阪奈:と回答しているわ。
もっとも、その回答は、
Y採掘事業に反対する内容の発言等があることや、Y採掘事業に関するそれぞれの考えを踏まえ
阪奈:てなされている…
神渡: つまり、
BがY採掘事業に反対意見を持っていることが、Y対策課の
→設置目的に照らしてふさわしい能力・資質がない。
→業務内容に照らしてふさわしい能力・資質がない。
神渡:ということですか?
単純化しますと、
Y採掘事業への反対意見
↓
↓
公務員としての能力・資質がない。
神渡:ということですか?
払猿: Bを正式採用しなかったA市の判断としてはそういうことになるでしょうね。
阪奈: そうしますと、ここでの問題は、A市のその判断を憲法的にどういう枠組みで検討するか?ということになりますね。
払猿: そうなりますね。
神渡: A市の判断を憲法的にどう統制するのか?
なかなか難しい問題です…
阪奈: 考え方としては、小山先生の議論が参考になると思います。
第6章 権利の論理と制度の論理(小山剛『「憲法上の権利」の作法 新版』(尚学社、2011年)160頁~)
阪奈:で、小山先生が様々な判例を示しながら分析していることがとても参考になります。
A市の判断は、募集要項に則ってなされています。
募集要項では、
採用に当たっては、Y対策課の設置目的や業務内容に照らし、当該人物がY対策課の職員としてふさわしい能力・資質等を有しているか否かを確認するために6か月の判定期間を設け、その能力・資質等を有していると認められた者が正式採用される
阪奈:という「仕組み」が採られています。
当該要項からすると、ふさわしい能力・資質を有しているか否かの判断は職員を採用するA市にありますから、この要綱は、A市にB採用・不採用の判断を委ねるという「仕組み」になっているわけです。
当該要項を素直に読むと、A市には職員採用に関して裁量があるということになるのではないでしょうか?
流相: つまり、A市に職員採用・不採用の裁量を認める「仕組み」になっているということですね。
払猿: そういうことになりそうですね。
神渡: ですが、その理屈だと、Bを正式採用しなかったA市の行為を憲法的に争うことがかなり難しくなると思います。
払猿: たしかにそうなります。
Bの主張にできる限り沿った訴訟活動を行うという観点からは、そのA市の判断をどう憲法的に統制していくのかが最重要課題となりますね。
では、どう考えましょうか?
---次回へ続く---