富公:本件認可の「処分」該当性判断をするためには、「処分」に該当するか否かの判断基準を理解していないといけないんです。
本日の講義では、その判断基準の理解に注力していく予定です。
ここを理解することが、行政法の思考のコツ習得に不可欠となります。
さて、「処分」の該当性判断基準の話に行く前に、行政法で「処分」性が問題となるのは何故か?について検討してみましょう。
何故でしょうか?
流相:はい、それは「処分」に該当すれば民事訴訟ではなく、取消訴訟などの抗告訴訟になるからです。
富公:その通り!
良いですね。
では、民事訴訟か抗告訴訟かでどういう違いがあるのでしょうか?
流相:出訴期間が短いです(行政事件訴訟法14条)。
それから、
不服申立てをしてからでないと出訴できない場合があります(行政事件訴訟法8条1項ただし書)。
え〜と、それから・・・
富公:そうですね。
そういった違いがあります。
では、もっと大きく、民事訴訟と抗告訴訟で何が違うでしょうか?
流相:もっと大きく???
富公:私の質問の仕方が良くなかったかもしれませんね。
民事訴訟、たとえば売買代金を請求する訴訟ではどういう争い方をしますか?
流相:え〜と、原告が自分に売買代金請求権があると主張し、その主張を裏付ける立証をするというように争います。
富公:そうですね。
では、抗告訴訟ではどういう争い方をしますか?
流相:「抗告訴訟ではどういう争い方をしますか?」ですか?
う〜ん・・・。
阪奈:抗告訴訟では、問題となっている行政庁の行為の違法性を争います。
不許可処分に違法性がある場合、その不許可処分という行為自体を争うのが抗告訴訟です。
富公:そうです。
民事訴訟は、原告に権利があるか否かを審理するわけです。
これに対して、
抗告訴訟では、行政庁の行為自体の適法性を審理するわけです。
つまり、
民事訴訟は”権利訴訟”
抗告訴訟は”行為訴訟”
ということになります。
流相:スイマセン、
”権利訴訟”
”行為訴訟”
でどういう違いになるんですか?
富公:先ほどの売買代金請求訴訟で検討してみましょうか。
どなたか説明できる方はいませんか?
阪奈:挑戦してみます!
売買契約成立の要件は、ある目的物(財産権)について幾らで売るか買うか、について売主と買主で合意があることです(民法555条)。
そして、民事訴訟では、その売買合意から生じた権利があるか否かが審判の対象となります。
あくまでも、権利の存否です。
これに対して、抗告訴訟では、売買合意自体の適法性が審判の対象となります。
流相:う〜ん、やっぱりよく分かりません。
阪奈:法律は、
要件→効果
の仕組みになっています。
民事訴訟は、効果に焦点を当てた訴訟です。
これに対して、
抗告訴訟は、要件に焦点を当てた訴訟だといえます。
流相:あ〜、そうなの〜?
神渡:でも何故、抗告訴訟は“行為訴訟”になるんでしょうか?
“権利訴訟”でも良いのではないか?と思うのですが・・・。
---次回へ続く---