玄人:
A(幇助)→B(幇助)→甲(刺突行為)→乙(死)
玄人:という間接従犯について、「因果的共犯論」からは、AがBを介して正犯者甲による結果発生を促進したと言える場合はAを幇助犯として処罰可能ということになる。
流相が言ったとおりだ。
じゃ、「不法共犯論」からは?
神渡: 違法な正犯行為(実行行為)の惹起に共犯処罰の根拠を求める「不法共犯論」からは、Aが正犯者甲の実行行為(刺突行為)を促進したかどうかがポイントとなります。
玄人: で?
神渡: 私としては、Aと甲との間にBがいても、AはBを幇助することを通して間接的に正犯者甲の実行行為を促進したと言えるだろうと思うので、間接従犯は処罰されると思うのですが・・・
玄人: そう考えることもできそうだな。
流相: でも、玄人先生、「不法共犯論」を採用する大塚先生は、
幇助行為は、基本的構成要件の内容としての実行行為ではなく、幇助者は正犯者ではないから、間接従犯についての規定がない以上、これを処罰しないのが刑法の趣旨である(大塚仁『刑法概説(総論)第三版』(有斐閣、1997年)310頁)
流相:とされています。
玄人: たしかに。
流相: 「不法共犯論」からすると、間接従犯は否定されるというのが僕の理解なのですが・・・
玄人: そもそも「不法共犯論」とは?
流相: 「実行行為を惹起・促進する」ことに共犯の処罰根拠を求める説です。
玄人: そうだ。
この説は、従犯の処罰根拠として、「実行行為を促進する」ことを重視している。
先の例では、Aは誰を幇助している?
流相: Bです。
玄人: Bは実行行為をしているか?
流相: いえ、Bは甲を幇助しているだけです。
玄人: Bの幇助は正犯ではないよな?
流相: はい、もちろんです。
狭義の共犯です。
玄人: じゃ、Aは共犯者Bを幇助したわけだ。
共犯者Bを幇助することは、実行行為を促進することではないよな?
流相: はい。
玄人: だったらもう答えは出たじゃないか!
流相: はい?
---次回へ続く---