払猿:最高裁は、どういうあてはめをしましたか?
阪奈:(ア)我が国における婚姻や家族の実態の変化、そのあり方に対する国民の意識の変化
(イ)諸外国との比較
(ウ)条約
(エ)住民票や戸籍の記載の仕方の変更や、国籍法3条違憲の判断
(オ)嫡出性の有無にかかわらず法定相続分を平等とするための法律案の準備
や、
(キ)嫡出性の有無による法定相続分差別を合憲とした平成7年決定(最大決平成7年7月5日)に5名の裁判官の(生まれにより決定される嫡出や非嫡出ではなく、個を尊重する立場からの)反対意見があり、その後の小法廷判決・決定においても個別違憲が繰り返し述べられたこと、などを総合的に考察して、
家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らか
阪奈:であり、
法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立
阪奈:されてきており、
本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していた。
阪奈:と判示しました。
払猿:一気に結論まで言ってしまいましたね。
阪奈:あっ!
すいません。先走ってしまいました。
払猿:いえいえ、良いのですよ。
どうせ結論は皆さん知っているわけですし。
それで、この判決(正確には“決定”ですが)は要約するとどう判断したのですか?
神渡:非嫡出子の相続分を嫡出子の半分にするという区別を設けていた当時の民法900条4号ただし書が憲法14条1項に適合するのか?という問題の下、嫡出子と非嫡出子の間で生じる法定相続分に関するこの区別が
合理的理由のない差別的取扱いに当たるか否か・・・立法府に与えられた・・・裁量権を考慮しても、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、当該区別は、憲法14条1項に違反するものと解するのが相当である。
神渡:という審査基準をまず、立てました。
その上で、上記区別に合理的根拠があるか否かについて、既に見ました要素、
(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)(キ)
などを考慮して、嫡出性の有無といった子にとってどうしようもない事柄を理由にその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重してその権利を保障すべきであるという考えが確立されてきていたので、遅くとも平成13年7月当時には、違憲だったと判示しました。
流相:要するに、
嫡出性の有無によって法定相続分に差を設けることは、
(1)憲法14条1項の平等の問題である。
(2)平等か否かは、合理性の基準による。
(3)様々な要素を考慮すると嫡出性の有無によって法定相続分に差を設けることは、平成13年7月当時においては合理的根拠がなかった。
(4)故に、平成13年7月当時において、当時の民法900条4号ただし書は違憲だ。
というわけですね。
払猿:そうです。
今、神渡さんと流相君がまとめたことがこの判例の骨子ですね。
ですが、“判例の射程”に関わってくる問題がこの判例にはありますね。
先例としての事実上の拘束性について
払猿:という見出しの部分以下がそれです。
この判例では、違憲となる時期について明示しています。
その明示部分(遅くとも平成13年7月当時)をどう理解するかが問題となります。
---【対話】司法試験論点分析-判例分析講座~嫡出性の有無による法定相続分差別~<憲法>(3)へ続く---