流相:ではどうしたら一文が長くても分かりやすい文章になるんですか?
玄人:それはだな、まずは一文を短くすることから始めるべきだ。
流相:なんか、それだと文章がぶつ切れでリズムが悪くなるような気が・・・
先ほどの中島敦さんの「山月記」の冒頭部分だって、ぶつ切りにしたら台無しですよ!
玄人:あの文章はあのままで完璧だ。
だが、君たちが書くのは文学作品ではない。
法律の論文だ。
法律論文にリズムは不要!
分かりやすい論理を書ければ良いんだ!
一文を短くすることが論理のわかりやすさにつながるのだから、一文は短く書くことをまずは意識する必要がある。
それがしっかりとできるようになれば、結論から書いても論理的破綻をきたさなくなる。
田中先生のような答案が書けるようになるわけだ。
逆に言うと、田中先生がおっしゃるような答案を書けない、ということは、その論点を理解していないということの証拠でもあるな。
流相:あらら・・・
玄人:目標は、「結論から書くこと!」
だが、いきなりそれは難しいから、まずは、一文を短くして論理を分かりやすくして文章を書くこと。
その際は、
1 何故この問題が生じるのか?(問題提起)
2 規範定立
3 あてはめ
の順で論理を押さえることが重要だ。
物事を習得するには順番が重要だからな。
神渡:そうですね。
でしたら、法学セミナーの特別企画で田中先生が書かれてある論証について少し分析をしても良いですか?
玄人:いいね。
そういう勉強が論理力向上につながるからね。
神渡:法学セミナー(2014/9/no.716)33頁には、
甲が、窃盗目的でA方に住居侵入した場合、・・・②甲がAの別居中の夫で一見平穏に入った場合
神渡:について、まず結論から書かれております。
1 【結論】甲が、窃盗目的で、別居して離婚調停中の妻Aの自宅にAに無断で隠し持っていた合い鍵を用いて入ったことにつき、住居侵入罪(刑法130条)が成立する。
神渡:その後、
2 省略
3 省略
4 甲は、合い鍵を用いて平穏にA方に入っているが、「侵入」に当たる。
神渡:として、住居侵入罪の構成要件要素に事案をあてはめています。
ただ、「侵入」については問題提起を含んだ書き方がされています。
これを先ほどの
1 問題提起
2 規範定立
3 あてはめ
で書き直すと、
1 無断でA宅に入る行為に住居侵入罪が成立するのか?
→ここで、住居侵入罪の構成要件要素の検討をしていきます。
2 この問題では、合い鍵を使って平穏にA宅に侵入しています。平穏に立ち入る以上、「侵入」にあたらないように思えるので「侵入」の意義が問題となります。
→保護法益から規範を定立する必要が出てきます。
3 あてはめ
という順序になりますか?
玄人:いいね!
そんな感じだよ。
そういう分析が出来るなら、結論から書くことはすぐにできるよ!
結局、神渡さんのような分析をすることがまずは先だということだ。
予備校答案が
1 問題提起
2 規範定立
3 あてはめ(結論)
となっているのも、論点を理解しやすくするための工夫といえる。
あながち間違いとは言えないわけだ。
阪奈:だけれども、目標とすべきは田中先生がおっしゃるように
“結論から書く”
ということなんですね。
玄人:そういうこと。
自分が今、どの段階にいるのかをしっかりと分析して答案の書き方を検討して欲しい。
神渡:分かりました。
私は、まだ、予備校の答案段階ですね。もっと、論点の理解を進めていきたいと思います。
阪奈:私は、基本的な理解をしっかりしつつ、結論から答案を書くように気をつけていきたいと思います。
流相:僕も結論から答案を書くようにします。
阪奈:いや、流相は論点の理解をしっかりした方が良いわよ。
予備校の答案段階にも達していないんだから(笑)。
流相:え~~?
そうなの~(悲)。
---答案の書き方<終>---