初戸:561条の担保責任ではどういう処理がされるのでしょうか?
神渡:561条によると、買主は他人物の所有権を取得することができないとき、契約を解除することができます。
ただ、契約時に契約目的物が他人物であることを知っていたときは、損害賠償請求をすることはできません(561条後段)。
初戸:561条の担保責任でも効果は債務不履行の効果と同じですね。
・損害賠償
・解除
です。
債務不履行の規定(415条後段、416条、543条)があり同じ効果が導かれるのに、なぜ民法には担保責任(561条)が規定されているのでしょうか?
流相:初戸先生、それは担保責任の法的性質をめぐる論点ですよね?
初戸:そうですよ。
流相:論点なら任せてください!
・法定責任説
・契約責任説
の対立があります。
初戸:論点的にはそうなりますね。
流相:法定責任説は担保責任を特定物に限って認めるという見解です。旧通説と言われています。
契約責任説は契約責任の特則として特定物・不特定物を問わず担保責任の規定が適用されるという見解です。新通説とも言われています。
初戸:内容は流相君が言った通りですね。
ですけど、法律は論点を勉強すれば良いというわけではありませんよ。
なぜ、論点が生じたのか?
論点が生じるに至った過程の理解が不可欠なのです。
その理解がないと、新しい問題を分析することはできません。
皆さんは法律家になるわけです。
法律家は既存の論点だけではなく、新たな論点を見つけだす能力も要求されますので、十分に気をつけて勉強しましょう。
流相:そうなんですね!
阪奈:(ホント、流相って・・・)
初戸:ま、この問題はこれくらいで良いと思います。
本問では、事案を処理することが目的ですから、法定責任説や契約責任説について触れる必要はほとんどありませんね。
どちらの説を採るにせよ、要件を挙げて当てはめて結論を出せば十分だと思います。
ということで、最後の問い大問2に行きましょうか。
---次回へ続く---