照田:旧司法試験の過去問を題材に捜査法から検討するぞ!
流相:分かりました。
照田:平成18年第1問の問題からオペを始める!
阪奈:“オペ”ですか!?
照田:旧試験の過去問を使って論点を分析するという意味だ!
良い表現だろ?
阪奈:はは・・・(苦笑)
神渡:はい!
お願いします。
照田:じゃ、流相、問題文をよろしく頼む!
流相:はい。
警察官Aは,甲に対する覚せい剤譲渡被疑事件につき,捜索場所を甲の自宅である「Xマンション101号室」,差し押さえるべき物を「取引メモ,電話番号帳,覚せい剤の小分け道具」とする捜索差押許可状を得て,同僚警察官らとともに,甲宅に赴いた。
玄関ドアを開けた甲に,Aが捜索差押許可状を呈示して室内に入ったところ,その場にいた乙が,テーブル上にあった物をつかみ,それをポケットに入れると,ベランダから外に逃げ出した。これを見たAらは,直ちに乙を追い掛け,甲宅から300メートルほど離れた路上で転倒した乙に追い付いた。Aは,乙に対しポケット内の物を出すように要求したが,乙がこれを拒否したため,その身体を押さえ付けて,ポケット内を探り,覚せい剤粉末が入ったビニール袋を発見した。Aは,乙を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕し,その覚せい剤入りビニール袋を差し押さえた。
以上の警察官の行為は適法か。
照田:じゃ、基本から行くぞ!
刑訴法上問題となりそうな警察官の行為は?
流相:①捜索場所、差押え物件を指定した捜索差押許可状を得た行為
②捜索差押許可状を提示して室内に入った行為
③乙の身体を押さえつけて、ポケット内を探った行為
④乙を覚醒剤所持の現行犯人として逮捕した行為
⑤覚醒剤入りビニール袋を差し押さえた行為
があります。
照田:そうだな。
で、本問で論じないといけない行為はどれだ?
流相:今僕が挙げた警察官の行為は刑訴法上の論点がある部分ですから、一応全ての行為を論じるべきかと思うのですが?
阪奈:明らかに適法な行為は論じる必要はないと思います。
照田:阪奈の言う通りだ!
じゃ、明らかに適法な行為はどれだ?
流相?
流相:え~と、
①は不要だと思います。
なぜなら捜索場所と差押物件が被疑事件と関連する範囲で明確に特定されているからです。
照田:そうだよな。
この①が219条1項に照らし適法な捜索差押許可状であることに誰も異論を述べないから①を本問で論じる必要はない。
流相:②も不要だと思います。
なぜなら室内に入る前に警察官は捜索差押許可状を甲に呈示しているからです。
この提示は事前の呈示ですから110条の執行の方式に合致します。
照田:いいねぇ。
流相:さらに、④現行犯逮捕自体にも違法性はありません。
なぜなら、乙は現に覚せい剤を持っていますから。
照田:うん、そうだな!
流相:ということで、
③
⑤
を本問では論じるべき、ということになるかと思います。
阪奈:(流相、なかなかいいじゃない!)
神渡:なるほど、そうですね。
論点がある部分だからということで明らかに適法な行為についてまで論じる必要はないということですね。
照田:そういうこと!
問題を解く際は、
(1)刑訴法上問題となりそうな警察官の行為をまず拾い上げておいて、
(2)その中で本問で検討すべき行為に焦点をあてる
ことが重要になる。
二段階で問題を検討する癖をつけておくと論点もれを防ぐことができる。
これを名付けて“二段階分析”と呼ぼう。
阪奈:(照田先生、楽しそう!)
---次回へ続く---