流相:そうすると、この⑤差押え行為は違法となる、という結論でいいですかね?
照田:そうかぁ?
流相:えっ?
だって本問の差押許可状で差し押さえることができないわけですから・・・
照田:令状がないと本問の覚せい剤を差し押さえることは絶対にできないんだったっけ?
阪奈:無令状での差押えを可能とする制度があります。
照田:ほぅ、具体的には?
阪奈:逮捕に伴う差押え(220条1項2号、同条3項)がそれです。
照田:そうだな。
令状主義の例外である“逮捕に伴う差押え”で本問の覚せい剤を適法に差し押さえられないかを検討する必要があるな。
ただ、本問で、この検討を大々的に展開する必要はあるだろうか?
流相:“逮捕に伴う差押え”は大きな論点ですからねぇ。
論じるべきな気がしますが・・・。
でも照田先生の言い方からすると、不要なような?
照田:おいおい流相、俺の顔色をうかがってどうする。
試験、ひいては実務では頼れるのは自分だけなんだぞ!
しっかりしろ!
論じる必要があるのかないのか?
流相:えっと、
あります。
照田:なんでだ?
流相:はい!
(え~い、いちかばちか)論点だからです!
照田:こら(怒)!
そんな態度では試験時間内に回答することができないぞ!
流相:はい、すみません!
照田:元気よく間違ってどうする?
本問では、この差押えは逮捕に伴う差押えとして適法であることに問題はないだろ?
流相:・・・そうですね。
照田:「逮捕する場合」
「必要があるとき」
「逮捕の現場」
「差押」
を問題なく充たすからな!
ということで、⑤覚せい剤を差し押さえた行為は、逮捕に伴う差押え(220条1項2号)として適法ということになる。
これでこの問題のオペは終了というわけだ。
流相:なるほどです!
お見事なオペでした、照田先生。
神渡:あの~、オペが終了した後ですみませんが、本問では、捜索差押許可状に「覚せい剤」と一言入れれば、この許可状に基づいて乙が所持していた覚せい剤入りビニールを差し押さえることができたわけですよね。
なんで、その一言を入れなかったのでしょうか?
入れておけば原則に基づく捜査が可能でしたのに・・・。
照田:まぁな、
そこは神渡君の言う通りだ。
通常は、「覚せい剤」という文言を入れるし、入れないとしても「その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」などの文言を入れるんだが、この問題では、どちらの文言もない。
実務的にはほぼありえない許可状の記載なんだが、その文言を入れない方が令状主義の限界についての理解を問うのにふさわしいといえる。
だから、その文言を入れなかったんだろうな。
神渡:そうなんですね。
照田:受験生は、令状があればその記載内容を検証することなく安易に捜索・差押えを有効としがちだからな。
神渡:分かりました。肝に銘じます。
阪奈:私も、もっと基本に忠実に勉強します。
流相:僕も自信を持って正解するようにします。
---過去問・旧試平成18①おわり---