阪奈: これまでの中間説は、
後行者が先行者の行為の効果を承継・利用して行為した場合に、承継的共犯の成立を肯定する(山口厚『刑法総論[第3版]』(有斐閣、平成28年)372頁)
阪奈:という学説だったわね。
神渡: そうね。
先行行為から生じた効果を利用したのだから後行者に承継的共犯が成立するという理解ね。
阪奈: たしかに、効果は利用しているけど、先行行為自体は利用していない。
というか、既になされた先行行為を利用することは時系列的にできない。
行為の「効果」の利用から、効果を惹起した「行為」に対する帰責を導くことには飛躍がある。(松原芳博『刑法総論』(日本評論社、2013年)384頁)
阪奈:という松原先生のご指摘の通りね。
流相: 僕は、効果の利用で承継的共犯の成立を肯定する立場だからなぁ…
阪奈: 流相は、さておき、因果的共犯論からすると、既になされた先行行為に対しては後行者は因果性を持ちえないのだから、松原先生のご指摘が正しいの。
そこで、因果的共犯論を維持しつつ、中間説的結論を採用するために、山口先生は、
先行者による行為の効果(反抗抑圧状態、畏怖状態、錯誤)を利用する後行者の関与行為は、自ら暴行・脅迫、恐喝、欺罔を行って財物の奪取・受交付を行うのと同じ、不作為による強盗・恐喝・詐欺にほかならないと構成することができるのではないかと思われる。(山口厚『刑法総論[第3版]』(有斐閣、平成28年)374頁)
阪奈:と考えたというわけ。
神渡: つまり、「効果の利用」というものが、不作為による強盗・恐喝・詐欺になる、という理解で大丈夫かしら?
阪奈: そういうことになるわね。
神渡: それだと、不作為犯の問題になるわけだから、不作為犯の成立要件を後行者が満たすかという問題になるわけよね?
阪奈: そう!
だから、山口先生は、後行者に保障人的地位が認められるかという不作為犯の問題を検討しているの。
流相: へぇ~。
承継的共犯を不作為犯で説明するんだ。
何と恐ろしく難しい考え方。
暗黒の章・絶望の章の「共犯論」に、これまた難解な「不作為犯論」をぶち込むという…
そんなの理解できないだろ?
というか、理解しなくてもいいんじゃないかな?
神渡: でも、承継的共犯を勉強するついでに不作為犯の理解も確かめられるのだから、考えようによっては一石二鳥かもしれない。
流相: それはそうだけど…
神渡さんは勉強熱心なんだね。
神渡: 早く、他の人についていかないといけないから…
---次回へ続く---