上場: 判例百選でも意識して読めば十分に実務家の仕事の過程を読み取ることができます。
流相: そうなんですか?良かった。
なにか具体例で説明していただけると助かります。
上場: そうですねぇ・・・
私は憲法の専門家ではありませんが、実務家として興味を持った重要な憲法判例(立川事件。最判平成20年4月11日)がありますので、その判例分析をしながら実務家の仕事の過程を分析しましょうか。
流相: お願いします。
阪奈: 助かります。
神渡: 宜しくお願いします。
上場: まず、この事案を単純化してみましょう。
誰か?
阪奈: 自衛隊立川宿舎の敷地に立ち入って、各号棟の各室玄関前まで立入り、各室玄関ドアの新聞受けに反戦ビラを投函した行為が住居侵入罪に該当するとして起訴された事件でした。
上場: そういう事案ですね。
反戦ビラを配布した人、ここでは甲としておきましょう。
甲は住居侵入罪で逮捕され、起訴されました。
甲は被告人として弁護人に弁護を依頼しています。
皆さんが、甲の弁護人だと想像してください。
甲から弁護の依頼を受けたあなたは甲を助けるためにどうしますか?
流相: 上場先生、僕ここが一番難しいんです。
どうしたら良いか分からなくなります。
上場: やはりそうでしたか。
実は、この部分が一番難しい、そして実務家の腕の見せ所なのです。
事実と法律が初めて交錯する部分で、事案の法的分析の出発点となる部分です。
コツは、甲が何に不満を持っているのか?ということを考えることです。
阪奈: 甲が被る不利益に着目するのですよね?
上場: そうです。
甲にどのような不利益があるのか?これが分からないと、その不利益を憲法論として構成することは永遠にできません。
ですから、この部分を意識して分析することは実務家にとってとても大切なのです。
流相: どうすればこのコツを身につけることができますか?
上場: 甲の身に自分を置いてみて甲の不満を想像することでしょうかね。
一日でできるものではありませんが、意識しておかないと身につかないので日々意識することを心がけてください。
流相: 想像ですね。
挑戦してみます。
・・・(瞑想中)
1分後
(ガク)
阪奈: こら!
今、寝てたでしょ?
流相: あっ、すみません、上場先生。
昨日徹夜してしまったものですから・・・
上場: ・・・
---次回へ続く---