上場: 飲食店でオムライスを頼んで食べた後で1円も財布に入っていないことに気がついた流相君が店員に見つからないようにお店から逃げたとします。
何罪の成否を検討しますか?
流相: 詐欺罪(刑法246条)だと思います。
でも、詐欺罪は成立しないような・・・
上場: 結論を出す必要はありませんよ。
何罪の成否を検討するのかがここでの問題ですから。
神渡: ですが、流相君は、店員を騙すような行為を行っていないのではないでしょうか?店員に黙って店から逃げていますから。
そうしますと、詐欺罪の成否を検討するきっかけ、みたいなものがそもそもないような気もします・・・
阪奈: でも、客観的に見ると、
(1)流相は一文無しだった。
(2)それなのに飲食店でオムライスを頼んだ。
(3)店側は、流相が代金を払ってくれるものと信じてオムライスを流相に提供した。
(4)それなのに、流相は代金を払わずに逃げた!
ということになるわ。
客観的に見ると、一文無しなのにオムライスを頼む行為は「欺」く行為にあたるから詐欺罪の検討をして良いのじゃないかしら?
流相: えっ?でも僕はオムライスを頼む時はお金を払おうと思っているんだから詐欺罪の故意はないよ。
だから僕に詐欺罪は成立しないと思うけど・・・
阪奈: 結論としてはそうなるのだけど、客観面から見ると、「欺」く行為があるのだから詐欺罪の成否を検討するのが筋としては良いと思うけど?
上場: 阪奈さんのおっしゃる通りですね。
いきなり故意の問題にいくのではなく、
客観面→主観面
上場:という流れをきちんと踏まえることが大切です。
全体的思考は刑法では御法度ですから。
そこの理解をすることが刑法の初歩として必要です。
主観と客観を混ぜずに分析的に思考することがポイントですね。
神渡: 流相君がオムライスを頼む行為について詐欺罪の成否を検討するのですね・・・
私は、流相君が代金を支払わないで黙って逃げた行為だけを見ていたから間違えたのですね。
上場: いえいえ、決して間違いではありませんよ。
神渡さんがおっしゃった行為に詐欺罪が成立しないかを検討することはいいことです。
とにかく、流相君の行為にこだわって何罪が問題となりそうか?ということを意識することが刑法のコツですから。
後は・・・
---次回へ続く---