神渡: 公訴権濫用論に触れた昭和55年裁決を読んでみますと、こう書いてあります。
(検察官の裁量権の逸脱が公訴の提起を無効ならしめる場合のありうることを否定することはできないが、)それはたとえば公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる
神渡:とあります。
流相: 今まで挙げた判示部分と何か変わる部分があるの?
神渡:
たとえば
神渡:という文言です。
流相: あっ、本当だ!
神渡: 「たとえば」ということなので、昭和55裁決が判示した「公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合」というのは、公訴権濫用論が適用される一例にすぎない、と最高裁は考えているのではないでしょうか?
流相: あ~、なるほどねぇ・・・
「たとえば」という文言にはまったく気がつかなかったよ。
判例は読み飛ばしちゃだめだねぇ・・・
阪奈: 昭和55年裁決の射程が今回の事案には及ばない、と弁護人が主張するにあたって、神渡さんが今言った文言は十分に武器になりそうね。
なるほどねぇ。
上場: 私もその主張は良いと思いますよ。
とにかく、昭和55年裁決の射程を外すためにはどうしたら良いのか?ということを考えることが弁護人としてはとても大切になると思います。
確定した判例があるからと言って、安易に諦めるのでは弁護士として仕事ができませんしね。
また、全く同じ事案も二つとないわけですから、確定した判例の事案と全く同じ事案というのは存在しないわけで、事案のその違いが判例の射程にどう影響してくるのか?という意識は仕事をする上で常に持っておく必要があると思います。
流相: ホントにそうですね。
これから常に意識したいと思います。
上場: では、次の国家行為を分析しましょうか。