錆新: A建物、B土地、C土地にはどの国の法が適用されるのかしら?
『準拠法の特定』の段階で他に検討すべき問題はあるかしら?
流相: A建物には、準拠法は甲国法と特定されましたから、甲国法が適用されます。
XYはいずれも甲国人で甲国に所在するA建物を取得してますから甲国国際私法の適用は問題となりません。
ですので、反致(通則法41条)の適用はありません。
阪奈: そうね。
流相: 結論は、A建物には、甲国法が適用されるということになるね。
錆新: OKよ。
では、B土地は?
神渡: B土地の準拠法も甲国法と特定されそうです。ただ、反致の検討をしなくてはなりません。
反致については、通則法41条本文によれば、
当事者の本国法によるべき場合
神渡:に該当します。そして、
その国の法に従えば日本法によるべきとき
神渡:は、日本法が準拠法と特定されます。
本問では、甲国法が準拠法として特定されますから、「当事者の本国法によるべき場合」に該当します。
また、甲国の国際私法によれば、夫婦財産制は、「夫婦の常居所地法が同一であるときはその法」によるとあります。
XY夫婦は、B土地取得時はともに日本に居住していましたからXY夫婦の常居所地は日本です。なので、甲国国際私法によれば、日本法が準拠法と特定され、「その国の法に従えば日本法によるべきとき」(通則法41条本文)に該当します。
錆新: ということは、B土地に適用される法は日本法ということでいいかしら?
阪奈: そこは、通則法41条ただし書の例外があります。
通則法41条ただし書では、夫婦財産制(26条1項)については、反致は認めていません。
段階的連結では、準拠法が慎重に選択されているため、反致により安易にその選択を否定すべきではないからです。
結局、B土地に適用される法は、甲国法ということになります。
錆新: 良いわよ。
じゃ、C土地は?
流相: (今度は僕が)
C土地の準拠法は日本法と特定されます。
「当事者の本国法によるべき場合」には該当しませんので、反致の検討は必要ありません。
ですので、日本法が準拠法と特定され、日本法が適用されます。
錆新: そうね。
ということで〔設問〕1はOKね。
では、次は、〔設問〕2に行きましょう。
流相: 書面のある夫婦財産契約ですから通則法26条2項の問題だと思います。
神渡: ですが、通則法26条2項は柱書で、適用される法を定めることを要求しています。
しかし、〔設問〕2の夫婦財産契約にはその定めがありません。
流相: えっ?
本当だ…
ということは、通則法26条1項ということ?
阪奈: そういうことになるわね。
変更されるまでの夫婦財産関係は変更前の『連結点』で処理されるという「変更主義」と、通則法26条1項、25条により、『連結点』は夫婦財産契約締結時のXY夫婦の同一の本国である甲国となり、準拠法は甲国法と特定されるわ。
そして、通則法26条1項の夫婦財産制には反致は適用されないから、甲国法が適用されると。
甲国民法③によれば、
「夫婦は、・・・婚姻中いつでも、その財産について書面により夫婦財産契約を締結できる。」
阪奈:と規定されているので、「A建物の所有権はXの特融財産とする」旨の夫婦財産契約が甲国において書面で締結されているので、その契約は効力を持ちます。つまり、XとYとの間において、A建物の所有権はXの特有財産となり得ます。
流相: あと、夫婦財産契約の方式については、夫婦財産契約の成立について適用する甲国法に従います。
甲国法では、夫婦財産契約は婚姻中いつでも、「書面により」締結することができるとありますから書面でなされた夫婦財産契約は方式としても有効です。
結論は、阪奈さんが言う通りです。
錆新: そういうことになるわね。
それじゃあ、次は〔設問〕3に行きましょう。
---次回へ続く---