払猿: 今回は、平成27年の憲法過去問を分析しましょう。
皆さん、少なくとも問題文は読み込んでいますね?
流相: もちろんです、払猿先生!
阪奈: 私もです。
神渡: 私も読んできました。
払猿: 皆さん読んできているようで良かったです。
では、早速分析に入りましょう。
〔設問1〕の(1)からです。
Bの主張にできる限り沿った訴訟活動を行うという観点から、どのような憲法上の主張を行うか。
払猿:と問われています。
Bはどういった主張をしていますか?
流相: 次の3つの主張をしています。
(1)Cと反対意見の具体的内容や意見表明に当たってとった手段・行動に大きな違いがあるにも関わらずCと自分を同一に扱ったことが差別である。
(2)能力はDらと同等かそれ以上であるにも関わらず、反対意見を持っていることを理由に正式採用されなかったことが差別である。
(3)自分の意見・評価を甲市シンポジウムで述べたことが正式採用されなかった理由であり、そこに憲法上の問題がある。
流相:この3つです。
払猿: まずは、その3つの主張を憲法論にしましょう。
それぞれ3つは憲法的に何が問題になりますか?
神渡: (1)と(2)は平等(憲法14条1項)の問題です。
(3)は難しいです。表現の自由(憲法21条1項)の問題のような気がしますが…
払猿: そうですね。
(1)と(2)の主張については、B本人も「差別」だと考えているとのことですから、憲法14条1項の問題となることは分かりやすいですね。
問題は、(3)の主張です。何が問題となるのでしょうか?
流相: A市が実施を予定しているY採掘事業に反対意見を述べたBの表現を、Bを正式採用しない理由としているので、表現の自由の問題だと思うのですが?
払猿: Bは反対意見の表明を妨害されたのでしょうか?
神渡: いえ、正式採用されなかったのは、Bが反対意見を述べた後の出来事ですから、Bは反対意見を表明すること自体は妨害されていません。
払猿: そうですね。
ということは、Bの反対意見の表明は直接に侵害されてはいないということです。
では、(3)は表現の自由の問題ではない、ということになりますか?
神渡: それはしっくりきません。
Y採掘事業への反対意見を表明したことが正式採用されなかった理由とされている、つまりある表現を理由にその表現を持ってBに不利益な扱いをしているのですから。
払猿: 確かにそうですね。
(3)をどう憲法的に構成するかを検討するにあたっては、三段階審査論の回で検討したように、どういう利益侵害があるのかを分析する必要があると思います。いわゆる「利益侵害論」です。
阪奈: 過去の表現・発言を理由に正式採用をしなかったことがBにどういう利益侵害をもたらしたのか?ということですね。
払猿: そういうことです。
どうでしょう?
---次回へ続く---