阪奈: 過去の表現・発言を理由に正式採用をしなかったことがBにどういう利益侵害をもたらしたのか?ということですね。
払猿: そういうことです。
どうでしょう?
流相: Bの信条を理由にBに不利益を課すものとして憲法19条違反の問題になりそうですが…
阪奈: でも、憲法19条は内心の自由の保障であって、この問題では内心の信条は公の場で発言されているから憲法19条の問題とするべきではないと思うわ。
Bが被る不利益は、これからのBの表現が制限されるのではないか?という不安だと思うわよ。
神渡: つまりは、表現への萎縮効果ということ?
阪奈: そうそう!
Bの不利益は、表現への萎縮効果ということになるわね。
でも、この不利益は、B個人の不利益にとどまらないでしょうね。
過去の表現・発言を理由に正式採用しないとなると、B以外の個人、つまり不特定多数者も自由に表現・発言することに不安を感じ、表現を不必要に控えるという事態が発生するといえるわ。
この事態の発生は自由な表現を前提とする民主主義を崩壊させるからその不利益に対して真剣に憲法論(表現の自由論)を展開する必要があると思うの。
その不利益、B個人の不利益と不特定多数者の不利益が憲法上のどの権利の問題なのか?を次に検討する必要があるわね。
流相: いわゆる「保護範囲論」の話だね。
払猿: 本問は、
平等の問題
と
表現の自由の問題
払猿:の2つがメインとなりますね。
では、「保護範囲論」に入りましょう。
まずは、「平等」の問題です。
Bの平等に関する主張をもう一度ここで確認しておきましょうか?
流相: はい。
(1)Cと反対意見の具体的内容や意見表明に当たってとった手段・行動に大きな違いがあるにも関わらずCと自分を同一に扱ったことが差別である。
(2)能力はDらと同等かそれ以上であるにも関わらず、反対意見を持っていることを理由に正式採用されなかったことが差別である。
流相:ということです。
しかし、どちらも平等の問題であることに特に問題はないと思います。
正当化論での審査基準論が問題となると思います。
払猿: ちょっと待ってください!
上のBの主張をもう一度よく見てください。
(1)と(2)の主張に何か違いはありませんか?
流相: ン~?
神渡: (2)は平等の問題でよく見ます。
同じなのに他より不利益に扱われたという主張です。
ですが、(1)は他と違うのに他と同じように不利益に扱われたという主張です。
流相: 何か違うの?
結局、他と比べて不利益に扱われたということだよね?
阪奈: そうだけど、通常、平等の問題は(2)が典型的よね。
たとえば、能力は同じなのに、男女間で賃金格差を設けることなどが典型例だわ。
ところが、(1)は典型例とは違っている。違うのに同じように不利益に扱っている。
(1)も平等の問題となるのか?という疑問が出てくるわね。
流相: あ~~、なるほどぉ。
ということは、(1)の主張が「平等」の保護範囲に含まれるか?を検討する必要があるということだね。
阪奈: そうなるわね。
払猿: 良いですよ!
では、どうなるでしょうか?
---次回へ続く---