神渡: 内容は分かったのですが、その「不法共犯論」は「因果的共犯論」と違うのでしょうか?
「不法共犯論」も惹起説とか促進説とか呼ばれているとのことなのですが、「因果的共犯論」も別名、「惹起説」と呼ばれていると記憶しているのですが・・・
違いがあるのかないのかよく分かりません・・・。
流相: う~ん・・・
たしかに、どちらも惹起説・・・
玄人: この部分が共犯論の中でややこしい部分だろうな。
「不法共犯論」と「因果的共犯論」はどこが同じでどこが違うのか?
大塚先生の先ほどの記述をもう一度見てみよう。
共犯者は正犯者の故意を惹起して違法な犯罪行為にいたらせ、またはその援助行為によって違法な正犯行為を促進したと解する(大塚仁『刑法概説(総論)第三版』(有斐閣、1997年)274頁)
玄人:となっている。
太字の赤い部分に注目だ。
阪奈: 惹起の対象が「不法共犯論」と「因果的共犯論」で違うということですね。
流相: ど、どう違うの?
阪奈: 「因果的共犯論」では、正犯を介するとはいえ、結果を因果的に惹起することが共犯の処罰根拠なのね。つまり、惹起の対象は、「結果(法益侵害)」
これに対して、「不法共犯論」だと、”正犯者の故意の惹起”や”正犯行為を促進”ということだから、惹起の対象は、「結果(法益侵害)」ではなく、「故意」や「正犯行為促進」ということなの。
神渡: そうなんですね。
なんかイメージがはっきりしてきました。
「不法共犯論」は、正犯の”実行行為”をメインターゲットにしていて、「因果的共犯論」は、”結果”をメインターゲットにしているということですね。
阪奈: そうそう!
流相: なんだ、「結果無価値論」VS「行為無価値論」の対立が「共犯の処罰根拠論」に投影された、ということなんだ。
玄人: そう。
神渡: あれ?
ですが、「不法共犯論」だと、正犯の故意を惹起したり、実行行為を促進することが共犯の処罰根拠となりますが、なんだか、共犯者固有の個人責任ではないような気が・・・
流相: えっ?
神渡さん、どういう意味?
神渡: つまり、共犯は、正犯から可罰性を借り受けているのではないかな?ということです。
---次回へ続く---