神渡: 私としては、逮捕の必要性を厳格に解するという点に憲法論が働いているのかな?と思ったのだけど・・・
流相: 具体的に言うと?
阪奈: ちょっと、あんたも少しは考えてみなさいよ!
流相: ・・・(相変わらず怖っ!)
神渡: 刑訴規則143条の3をみると、
「・・・裁判官は、・・・諸般の事情に照らし、・・・明らかに逮捕の必要がないと認めるときは・・・」
神渡:と規定されています。
この規定の仕方は、裁判官に、逮捕の必要性の判断についてある程度の裁量を認めているのだと思います。
流相: そうだね。
あっ!
その裁量を表現の自由の重要性に鑑みて縛るというわけだ!
神渡: そういうことかと思うの。
流相: でもどう縛る?
阪奈: そうねぇ、表現の自由の重要性に鑑みて、あっ、表現の自由が何故重要なのか?について触れる必要があるけど、ここでは省略するわね。
表現の自由の重要性に鑑みて、表現の自由の行使である政治ビラ配布行為の場合は原則として逮捕の必要性が認められない、と推定するという”認定枠組”を設定しても良いかもね。
どうですか、上場先生?
上場: 良いんじゃないでしょうか。
特に正解があるというわけではないですし。
今、阪奈さんがおっしゃった”認定枠組”を使うと、どうなりますか?
神渡: まず、刑訴規則143条の3の仕組みは、
・被疑者が逃亡する虞がなく、
かつ
・罪証を隠滅する虞がない
として、逮捕の必要性がないことが明らかだと裁判官が認めた場合、裁判官は逮捕状の請求を却下しなければならない、となっています。
そして、逮捕の必要性があるか否かは、
・被疑者の年齢及び境遇
・犯罪の軽重及び態様
・その他諸般の事情
を考慮要素とすべきだと規定しています。
流相: ということは、この事案で、政治ビラ配布行為をした人が、
・逃亡の虞がなく、
かつ
・罪証隠滅の虞もない、
と認定された場合は、その人を逮捕する必要がない、よって、逮捕状請求は却下すべきで、にも関わらず逮捕状を発付した裁判官の行為は、刑訴規則143条の3に反し違法だ、ということになるんだね。
阪奈: 考え方の大枠はそうなるでしょうね。
でも、問題は、違法という結論になるのかどうか?
神渡: たとえば、次のような認定はどうでしょうか?
---次回へ続く---