玄人: この事例では犯罪事実を認識しているかどうかを疑わせるような事情は書かれていないから検討する必要はないといえるんだが、この場は練習だから突っ込んで聞いてみたんだ。
じゃ、犯罪事実の”認容”はあるかな?
流相: 乙は死んでいますから認容もあったと思います。
玄人: そうか?
流相は結果責任を問うのか?
いったいいつの時代の人間だ?
流相: えっ?
玄人: 流相の言い方だと、人が死亡した以上、行為者には故意があるといっているのと同じなんだが?
流相: そういう意味ではないんですが・・・
玄人: もう一度問題文を読んでみろ!
流相: はっ、はい!
甲は乙を部屋に閉じこめて、数時間にわたって殴る蹴るの暴行を加えた。その結果、乙は死亡した。あなたが検察官だとした場合、甲を何罪で起訴するか?
流相:というのが問題文です。
玄人: 認容説から甲に犯罪事実の認容があったかどうかを検討するためには、どの事実に着目すれば良いんだ?
流相: え~~と・・・
死亡の可能性が高い”殴る蹴るの暴行”行為をしているという認識があれば”認容”があったといって良いのかと・・・
玄人: う~ん・・・
そもそも”認容”って何だ?
流相: 受け入れる、という意味かと・・・
玄人: 何を受け入れるんだ?
流相: それは、乙の死亡結果だと思います。
玄人: そうだよな?
じゃ、この事例で、甲は乙の死亡結果発生を受け入れたことを伺わせる事情はあるか?
流相: (なんか、流れ的に故意否定な感じがする・・・)
ない・・・です。
玄人: 本当に~~?
流相: え~?
どっちなんですか?
玄人: どっちかってこっちが聞いているわけ!
俺の顔色を見たって勉強にはならないぞ~!
神渡: ここでも、”数時間にわたって”暴行していることがポイントになりそうです。
玄人: ほうほう。
具体的には?
神渡: 甲の暴行行為が乙殺害の実行行為性を持つとした場合を前提としますと、先ほど検討したように甲は実行行為性を認識していました。
そして、甲はその認識を持ちながら、”数時間”にもわたって乙に暴行を加えています。
もし、”乙が死ぬかもしれない、それはまずい”、と甲が思っていたとすると、数時間にもわたって乙に暴行を加えることはないはずです。
しかし、甲は数時間にもわたって、殺人罪の実行行為を継続しているわけですから、甲は乙の死亡結果を受け入れていたと考えられます。
流相: あっ!
そういうことかぁ。
ん?でも、”数時間にわたって”という事情はさっき使ったけど?(同じ事情を何回も使えるのか?)
---次回へ続く---