流相: どの国家行為を対象とするかで何か変わってきますか?
上場: 変わってきます。
議論の土俵が変わってくるのです。
流相: どう変わってくるんでしょうか?
上場: ヒントとしては、国家行為には必ず法的根拠がありますね。
ですから、土俵を設定するには、国家行為の法的根拠を探す作業が必要となります。
神渡: そういうことなんですね。
たとえば、逮捕行為という国家行為を対象とする場合、刑事訴訟法の逮捕に関する規定(刑訴法199条)が土俵となるわけですね。
流相: なるほどぉ。
上場: 神渡さんのいう通りです。
上場: 逮捕の要件は何ですか?
流相: え~と・・・
阪奈:・「被疑者罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(嫌疑の相当性、刑訴法199条1項)と
・「明らかに逮捕の必要がない」場合ではないこと(逮捕の必要性、刑訴法199条2項但書)
が要件です。
流相: どう憲法論を展開するのですか?
上場: この事案では、嫌疑の相当性は問題なく認められるでしょうね。
ということは?
流相: 逮捕の必要性で争うと?
上場: 逮捕行為を対象とする場合はそうなるでしょう。
具体的にはどう争えばいいと思いますか?
流相: う~ん・・・
上場: ヒントは、逮捕の必要性を誰が何を考慮して判断するのか?を分析することです。
神渡: たしか、逮捕の必要性については、刑事訴訟法規則に規定があったはずです。
え~と、規則の143条・・・の3です。
上場: よく勉強していますね。
そこには何と規定されていますか?
神渡:
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
神渡:と規定されています。
上場: 逮捕の必要性を判断する主体は、令状審査をする裁判官ということですね。
神渡: はい。
上場: 令状裁判官は、どういった事情を考慮するのですか?
神渡:・被疑者の年齢や境遇
・犯罪の軽重や態様
・その他諸般の事情
です。
上場: ここまで分析をすれば、どういう憲法論が可能かは分かったのではないですか?流相君!
流相: えっ?
いや・・・
---次回へ続く---