払猿 :Aの訴訟代理人としては、「厳格審査基準」、つまり「規制目的がやむにやまれぬ必要不可欠なものである」かどうかで判断する、という筋で良いでしょう。
次は、B側の反論のポイントのみを簡潔に述べる部分ですね。
阪奈 :それにつきましては、先ほど述べました「裁量論」がB側の反論になると思います。
つまり、B県立大学教室使用規則を見ますと、B県立大学側が「政治的目的での使用」であるのか、「教育・研究目的での使用」であるのかの判断をする主体ということになっています。
ということは、教室使用申請を許可するか否かは、基本的にB県立大学の裁量の問題だ、というようにB県側は反論するだろうと思います。
払猿 :それで、良いでしょうね。
そうすると、その反論も踏まえた上で、「あなた自身の見解」を述べることになります。
流相 :私としては、「信条」を理由とする不平等取扱について裁量論の議論をすることは妥当ではないと思います。
断固、Aの訴訟代理人の議論を支持します。
阪奈 :それはそれで良いのではないでしょうか?
ですが、その場合、B県立大学教室使用規則の存在をどう扱うかが問題となるはずです。
流相君の考えでは、その規則はどうなりますか?
流相 :(え~と)・・・それは・・・
阪奈 :私としては、大学には、「大学の自治」があり、その自治の範囲内で大学側に裁量が認められるべきだろうと思いますので、裁量の問題だというB県側の反論に一部賛成したいと思います。
神渡 :ですが、そうなると、Aにあまりに不利となりませんか?
大学の自治をもって学生に不利益を与えるのは、「大学の自治」の趣旨にそぐわないような気もしますが・・・。
阪奈 :(う~ん)ですが、「大学の自治」の主体は学生ではなく、教授会ですから、大学の裁量を認めても「大学の自治」には反しないと思います。
払猿 :そこは、自身の見解として「大学の自治」の主体に学生を含めるべきだという議論をすることも可能かもしれませんね。
ただ、判例は、「東大ポポロ事件」でそのことを否定していますから、肯定することは時間的にも難しいかもしれません。
阪奈さんの筋で行くとどうなりますか?
B県側の反論に一部賛成ということでしたが。
阪奈 :たしかに、B県立大学に裁量を認めるのですが、しかし、ことが「信条」に基づく不平等取扱ですので、その裁量権の行使を厳格に限定すべきではないか?と考えています。
払猿 :そうなると、どうなりますか?
阪奈 :つまり、「政治的目的での使用」か否かの判断(要件該当性判断)を具体的事実に照らして厳格に判断する、という考え方が妥当だろうと思います。
私としましては、「政治的目的での使用」であるかは、もっぱら政治的目的であることが具体的事実に照らして客観的に明らかである場合に限定すべきだ、という風に考えます。
流相 :(へぇ~)
払猿 :その基準を使うと、どういう結論になるのですか?
阪奈 :Aは、たしかに、知事の施策方針に反対する県議会議員を後援者として招いていますし、Aが主宰したデモ行進では、社会福祉関係費の削減に反対という横断幕が掲げられており、政治色があります。
しかし、Aは、Cゼミ生として、C教授の承諾を得て、「格差是正を考える」シンポジウムを開催しています。これは、憲法の「人間の尊厳」にかかわるテーマでして、憲法研究のテーマの1つです。
そもそも、憲法と政治は切っても切り離せない関係にあるのですから、憲法研究をすることは政治とも絡むはずです。
また、レポーターの質問にAが答えた内容は、デモ行進を許可しなかった不許可処分への批判であって、そのことが県政批判にあたる具体的事実は見あたりません。何ら弊害の生じない平和的なデモ行進であるのに、そのデモ行進を不許可とした当局の判断の妥当性を批判しているに過ぎません。たしかに、Aは、「県の重要な政策問題に関する意見の表明を封じ込めようとする」ということを言っておりますが、それは、単に当局の判断の理由を推測して言っているに過ぎないのですから、県政批判にはまったくもってあたりません。
加えて、Aは知事の施策方針に賛成の県議会議員も講演会に招く具体的計画を持っていましたので、政治的に中立を保とうという事実が認められます。
これらの具体的事実を考えますと、当該不許可処分は、政治的目的であることが具体的事実に照らして客観的に明らかであるとはいえません。結局、裁量を逸脱し14条1項後段に反し違憲であると考えます。
流相 :(ほぉ~~)
ゴーンゴーン
払猿 :鐘も鳴りましたので、司法試験平成25年度の憲法過去問の分析はこれで終わりましょう。