払猿 :保障範囲を制限するという神渡さんの主張に対して阪奈さんはどう反論しますか?
阪奈 :営業の自由と自己実現の関係をどう考えるかですよね。
私としては、営業の開始・終了だけを「営業の自由」の核心としたのでは、「営業の自由」の保障は片手落ちだと思います。
どういう形態で営業するかも自己実現に密接に関わります。
本問でしたら、洗髪はしないが安価・迅速に散髪を行うという営業形態です。このサービスを提供することでお客様に喜んでもらえることは営業者のやりがいにつながるわけですから、自己実現と密接に関わります。
営業を開始したにもかかわらず、開始した途端に自由に営業形態を制限されるとしたのでは安心してその営業を開始することが出来ず、やりがいを失うことになります。
なので、営業の過程も「営業の自由」の核心部分で保障すべきだと思います。
たしかに、営業の自由は精神的自由と違って社会的関連性が強い自由ですが、それが保障範囲を限定する理由にはならないはずです。制限の必要が強いのでしたら具体的な審査基準を緩めることで対応することができるのですから。
払猿 :良いんじゃないでしょうか?
阪奈さんの反論も説得的だと思います。
後は、個人の好みで選択すれば良いでしょうね。
払猿 :そうすると、次はどうしますか?
流相 :制限は、阪奈さんがいったように洗髪設備の設置の強制か廃業の強制かの二者択一ですから、制限強度は強いと思います。
しかし、営業形態は「営業の自由」の核心部分での保障ではないと考えますから洗髪設備を設けない理容所の営業の保護強度は弱いといえます。
そうしますと、具体的な審査基準としては、「合理性」基準で良いと思います。
阪奈 :私は、制限強度のみならず、保護強度も強いと考えますから具体的な審査基準は厳格に考えます。
そこで、「厳格な合理性」基準が妥当だろうと思います。
払猿 :そういうことで良いと思います。
払猿 :この問題での当てはめは省略しましょう。ここでは、あくまでも「思考枠組」に照らした事案の分析がメインですから。当てはめは各自で検討しておいてください。
決して当てはめを疎かにして良いという意味ではないので注意してください。
・・・続く。