富公: 問題文はどうなっていましたか?
流相: え~と、
本件認可は、取消訴訟の対象となる処分に当たるか。土地区画整理組合及びこれに対する定款変更認可の法的性格を論じた上で、本件認可の法的効果を丁寧に検討して答えなさい。
流相:となっています。
しかも、
以下に示された【法律事務所の会議録】を読んだ上で、弁護士Eの指示に応じ、弁護士Fの立場に立って、設問に答えなさい。
流相:とあります。
富公: では、本件認可の処分性を検討していきましょう。
処分該当性判断基準に照らして検討していきましょう。
もう一度、処分該当性判断基準を挙げておきます。
・「公権力性該当性」
・「法効果」
・「国民」への法効果
・「個別的」法効果
・「直接性(ファイナル性)」
ですね。
神渡: まず、「本件認可」に公権力該当性は認められます。
なぜなら、土地区画整理法39条1項によれば、「都道府県知事」が組合の定款変更の認可をすると明示してあるからです。
流相: 定款変更が認可されることで変更された内容の定款が組合で効果を持ちますから組合への「法効果」も認められます。
富公: そうですね。
では、組合への法効果が「国民」への法効果と言えますか?
流相: えっ?
え~と・・・組合が「国民」なのかどうか・・・?
あっ、ここで、組合の法的性格が問題となるんですね。
富公: そうです。
土地区画整理組合はどういう法的性格を有していますか?
神渡: 【法律事務所の会議録】で、弁護士Eは、AさんがC県の職員から、「本件組合は、行政主体としての法的性格を与えられている」と言われたそうです。
富公: そうですね。
弁護士Eは弁護士Fに対して、まず、
(a)本件組合が行政主体であるとはどういうことか?
(b)土地区画整理法にそのようなことが規定されているか?
の検討をお願いしています。
ですので、まずは、(a)から検討してみましょう。
本件組合が行政主体であるとはどういうことですか?
神渡: え~と、“行政主体”とは、行政上の権利義務の帰属主体のことです。
行政上の権利義務は、行政権行使の結果生じますから、“行政主体”というのは、行政権を行使する主体のことだろうと思います。
そして、“行政権”とは、強制力を持つ公権力を行使する権限ですから、“行政主体”というのは、結局、強制力を行使する公権力主体のことだと思います。
ということは、「本件組合が行政主体である」とは、本件組合が強制力を行使する公権力主体であるという意味かと思います。
流相: なるほど、なるほど!
富公: 神渡さんのおっしゃるとおりですね。
では、その強制力を行使する公権力主体性は土地区画整理法に規定されているのでしょうか?
(b)の問題ですね。
神渡: 公権力主体であるか否かの判断基準は、法律要件該当性判断の主体であるとの明文が法律に規定されているかによるわけです。
【資料3 土地区画整理法】では、第40条1項で、「組合」は、「組合員に対して金銭を賦課徴収することができる。」と規定されています。
また、第40条4項では、「組合」は、賦課金の納付を怠った組合員に対して「過怠金を課すことができる。」と規定されています。
さらに、「組合」は市町村長に対して、賦課金等の徴収を申請することができるとも規定されています(第41条1項)。
こういった規定は、「組合」が組合員に対して、強制的に経費を「賦課徴収」し「過怠金を課す」権限を明文で認めていますから、これらの規定は本件組合が強制力を行使する公権力主体であることを規定したものだと思います。
富公: 重要な規定があげられていますね。
ですが、あと1つ、重要な規定がありますよ。
流相: えっ?なんですか?
富公: 組合員がその組合に自由に加入し、組合から自由に脱退することができるのであれば、その組合が組合員に強制力を行使しているとは言いにくいですよね?
神渡: あっ、
強制加入団体性のことですね。
え~と、土地区画整理法では・・・
ありました。第25条です。
組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組員とする。
神渡:とあります。
富公: そうですね。
その規定も、本件組合が“行政主体”であることを表す規定といえますね。
(a)(b)の検討により、本件組合が組合員に強制力を行使していることが分かりましたね。
としますと、組合は「国民」なのですか?
神渡: いえ、違います。
強制力を行使する公権力主体ということになります。
富公: その上で、C県職員は
下級行政機関である本件組合に対する本件認可は、処分に該当しない
富公:と明言していますが、何故なのか?を検討しましょう。
---次回へ続く---