玄人: 公務員をA、賄賂を受け取る非公務員を甲、賄賂を贈る人を乙としてみよう。図示するとこうなる。
乙(贈)→甲(収)A
玄人: この場合、Aに身分なき故意ある道具甲を利用した間接正犯が成立すると理解するのが通説だが、「一般違法従属性説」からだとこうなる。
・非公務員甲→収賄罪の幇助犯
・公務員A→収賄罪の教唆犯
神渡: まさに「正犯なき共犯」ですね。
流相: 結局、「純粋惹起説」からは、「正犯なき共犯」を認めることになるんですね。
玄人: そうだな。
流相: そうなると、共犯行為だけで共犯処罰を認める「共犯独立性説」と変わらないような気がしますが?
阪奈: そこは違うと思うわよ!
流相: えっ?だって、
・「純粋惹起説」は「正犯なき共犯」を認める。
・「共犯独立性説」も「正犯なき共犯」を認める。
流相:ということで全く同じじゃないか!
阪奈: いや、だから「純粋惹起説」は正犯者の何らかの行為がないと共犯処罰ができないけど、「共犯独立性説」だと正犯者が何も行為をしなくても共犯処罰が可能なのよ!
流相: でもでも、どちらの学説も、正犯者の実行行為は不要という点で共通するだろ?
つまり、どの学説からでも正犯者は処罰されない、という点で同じなんだ。
阪奈: それはそうだけど、その点で同じだから何なの?
学説の違いを分析する際は、どういう帰結の違いをもたらすかに注意すべきだと思うけど?
同じ帰結をもたらすのであれば取るに足らない違いだと思うわよ!
流相: なにを~!
玄人: まぁまぁ、熱くならない。
具体例で検討してみよう。
予定より早いが、「教唆の未遂」という事例を挙げよう。
誰か説明してくれないか?
神渡: では、私が説明します。
空の金庫であることを知りながらAが甲に金庫内の現金を盗むように教唆したが、甲がこれを実行しなかった場合に、Aに窃盗教唆の未遂犯が成立するか?
A(教唆)→甲(何らの行為もせず)
神渡:という問題です。
玄人: どうなる?
---次回へ続く---