玄人: 「共犯の処罰根拠論」を巡る学説について一応まとめておこう。
流相頼むぞ!
流相: え〜、なんで僕が・・・
え〜と、こういうことですよね。
玄人: そうだな。
学説名を整理しておくと、この講義で使った
・「不法惹起説」は修正惹起説と呼ばれることがある。
・「修正惹起説」は混合惹起説と呼ばれることがある。
同じ学説名で違う学説を扱っていることがあるので、学説名ではなく内容を確認するようにして欲しい。
神渡:
「修正惹起説」=「共犯従属性説」+「因果的共犯論」
神渡:ということなんですね。
玄人: これまでに分析したことを元に、共犯の個別論点を検討してみよう。
「未遂の教唆」から行こう。
「未遂の教唆」とは?
神渡: 初めから未遂に終わらせる意図で教唆することです。
玄人: うん。
具体例は?
神渡: 大塚仁先生の基本書に載っている事例があります。
丙が防弾チョッキを着用していることを知っている甲が、乙に対して、丙をピストルで射殺するように唆したような場合(大塚仁『刑法概説(総論)[第三版]』(有斐閣、1997年)295頁)
神渡:です。
甲→乙→丙(防弾チョッキ着用)
玄人: 基本の確認をしよう。
乙の罪責は?
流相: 殺人未遂罪が成立します(203条、199条)。
玄人: うん。
で、いよいよ甲の罪責を検討する。
考えられる罪名は?
流相: 殺人未遂の教唆(61条、199条)だと思います。
玄人: その通り!
では、甲に殺人未遂の教唆犯は成立するか?
神渡: それは、「共犯の処罰根拠論」から検討します。
共犯独立性説からは、教唆行為は終わっていますから、未遂の教唆は成立します。
共犯従属性説のなかで「責任共犯論」と「不法共犯論」は同じ結論になると思います。
玄人: どういう結論?
神渡: 成立するという結論です。
玄人: うん、そうだ。
理由は?
何が問題になってる?
神渡: えっと・・・
流相: 教唆の故意の内容が問題となります。
玄人: じゃあ、因果的共犯論の2説からはどうなる?
流相: 未遂の教唆は成立しません。
玄人: 何故?
流相: 教唆の故意がないからです。
玄人: 結論はそうだな。
では、どうして、教唆の故意の内容に違いがあるんだ?
---次回へ続く---