神渡(かんと)は、国立大学のロースクールに入学した新入生。
彼女は、理系(IT系)の学部を卒業してロースクールに入学した異色の存在だ。
もちろん、これまで法律を全く学んだことはない。
これから、未知の分野に挑戦だ!
シラバスによれば、初めての講義は、
「法学概論」 となっている。
4月の開講前の1週間で集中講義をするという形だ。
「法律は何をするのだろう?」
私は、希望と同時に不安で胸が一杯になった。
「法学概論」の先生は、玄人(クロード)と書かれてあった。
彼は、本来は刑法の先生らしい。
「玄人教授か、珍しい名前だなぁ」
(自分の名前の珍しさを棚に上げて)私は、そう思った。
玄人先生が指定した教科書があったので、講義が始まる前に読んでみることにした。
法律は、
『法的紛争』を解決するための道具だの、
法的紛争を解決するためには、
(1)『事案の分析』
(2)『判断枠組の設定』
(3)『当てはめ 』
が必要だと書いてある。
そもそも
「『法的紛争』とは何だろう ?」
「『事案の分析』」とは何をするのだろう?」
「『判断枠組の設定』 って何だろう?」
「『当てはめ』って何をするのだろう?」
「全然分からないわ」
(思わずそう呟いた)
私は、玄人先生が指定した教科書を読んだことを後悔した。
と同時に、全くの畑違いのロースクールに入学したことは失敗ではないか?と強く不安に思った。
後悔と不安を抱いたまま、初受講の日がやってきた。