ー玄人研究室の前ー
流相 :コンコン
玄人 :誰?
流相 :流相です。それに、神渡さんと阪奈さんもいます。
玄人 :開いてるよ~。
流相 :失礼しま~す。
神渡 :失礼します。
阪奈 :(入りたくないけど)入ります。
玄人 :どうした、3人で。
流相 :授業後、神渡さんと阪奈さんは、女子会とかいって、どっかいってましたけど、ついさっき、ロースクールのビル前で会って、
“そういえば、玄人先生は、何で、新司法試験の過去問ではなく、旧司法試験の過去問の検討をしているんだろう”って話になったんですよ。
だったら、直接先生に聞きに行こう!って話になったんで、先生の研究室に久しぶりに遊びに来ました。
玄人 :なるほど。
何故、旧司法試験の過去問なのか?ということだな。
流相 :新司法試験と旧司法試験とでは、出題傾向が違うじゃないですか。
僕たちは新司法試験の受験をするのだから、新司法試験の過去問を検討した方が合格に近づくんじゃないかっていう意見があったりするんですよ。
玄人 :ふむ、それは私も知っている。
神渡 :私は、論点の理解がまだまだなので、旧司法試験の過去問を検討することが勉強になっていますよ。
阪奈 :私は先生のやり方がいいと思います。
玄人 :色々な考え方があるだろうな。
僕としての考えを言っても良いかな?
刑法は学説が極めて複雑に対立している分野だ。学説の対立の海でおぼれる者も続出する。学説の対立の海でおぼれるとどうなると思う?
流相 :刑法の答案を書くことができません。
玄人 :そうだ。
刑法の答案というのは、刑法の「思考枠組」に従って分析した結果を記述するものだ。
刑法の学説というのは、「思考枠組」の1要素を構成するから、その学説の対立の海でおぼれるということは、刑法の「思考枠組」の一部を失うということになる。
刑法の「思考枠組」なくして刑法の答案を書くことはできないのだから、学習者は、何をもってしても、刑法の「思考枠組」の獲得に努力しなければならないわけだ。
そのためには、どういう勉強をしたら良いと思うか?
流相 :新司法試験の過去問を解きまくることですか?
玄人 :もちろん、悪くはない。
いずれにしろ、新司法試験の過去問は解かなければならない。
しかし、勉強し始めに解くべきかどうか?
ここがポイントだな。
神渡 :時期の問題なんですね。
流相 :先生は、始めから新司法試験の過去問を解くべきではないと?
玄人 :結論から言うとそういうことだ。
新司法試験の問題はとても良い問題だと僕も思う。
しかし、事実が多すぎるんだ。初学者はまだ、刑法の「思考枠組」がしっかりと定着していない。そんな状態で、新司法試験の過去問を解くと、あまりの情報量の多さに、刑法的分析が困難となることがあるんだ。
まさに、羅針盤なくして航海に出るというイメージだ。
どう考えたって、難破するに決まっている。
僕としては、まずは、刑法の「思考枠組」の習得に努めて欲しい。そして、そのためには、事実が多くない旧司法試験の過去問分析がお勧めなんだ。
その上で、新司法試験の過去問分析をして欲しいと思っている。
流相 :たしかに、先生のおっしゃるとおりですね。
僕も学部時代の4年間、刑法を勉強したんですけど、講義を受けていて、未だ、刑法の「思考枠組」を習得できてないなぁと感じますもん。
阪奈 :その通りね。
よく自分のことがわかってるじゃないの!
流相 : ・・・
神渡 :私は、流相君の知識に助けられてるわよ。
流相 :(神渡さん、天使だ)
阪奈 :ともかく、玄人先生のお考えはよく分かりました。
もう失礼します(相変わらずのちらかりっぷりだわ。何本空のペットボトルが転がっているのかしら?こんなところに長居したら私の精神がもたないわね)。
帰りましょうか?神渡さん。
神渡 :では、失礼します。
流相 :あ、じゃあ僕も失礼します。
玄人 :おう、また講義でな。