流相: “急がば回れ”か。
聞いたことはあるな!
でも、自分一人では、回っている間に別の所も回って、結局どこを回っていたか分からなくリ、迷子になるんだよ。
全くの非効率!
だから、この場で解決したい。
払猿: それは良い疑問ですよ。
試験的には最高裁の「目的効果基準」の定式が使えさえすればいいのでしょうけど、理解した方がその定式をより使いこなせると思いますから。
では、まず、最高裁の「目的効果基準」の定式と、学説の「目的効果基準」を要約してみましょう。
流相: まずは、最高裁から。
当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為…
流相:となっております。
学説では、アメリカ連邦最高裁の判例である「レモン・テスト」に依拠し、次のように言っております。
問題となる政府の行為が、①正当な世俗的な目的を有すること、②その第一次的な効果が宗教を助長したり抑圧したりするものでないこと、③政府を宗教に過度にかかわらせるものでないこと、という3つの基準に照らして、そのすべてに合致した場合に限り政府の行為を合憲とするもの(長谷部恭男『憲法 第6版』(新世社、2014年)191頁~192頁)
流相:としています。
払猿: そうですね。
最高裁の「目的基準」と「効果基準」はどういう位置づけでしょうか?
神渡: たしか、最高裁は、上記の「目的基準」と「効果基準」を充たして初めて、国家と宗教とのかかわりあいが
相当とされる限度を超える
神渡:ことになり、違憲となると判示していました。
ということは、上記、「目的基準」か「効果基準」のいずれかを充たさない限り合憲となります。
流相: レモン・テストでは、①②③全てに合致した場合に限り合憲、ということですから、どれかに合致しなかった場合は、違憲となります。
払猿: 最高裁の定式とレモン・テストを比較するとどういうことが言えますか?
流相: え~…
阪奈: 最高裁の定式では、ある国家行為を違憲とするためのハードルが2つあります。
レモン・テストでは、ある国家行為を合憲とするためのハードルが3つあります。
つまり、
最高裁の定式では、政教分離に違反して違憲とすることが難しくなり、レモン・テストでは、逆に合憲とすることが難しくなるという違いがあると思います。
又は、
最高裁の定式では、政教分離に反せず合憲とすることが容易となり、レモン・テストでは、逆に違憲とすることが容易となります。
払猿: そういうことだと思います。
流相: では、どうして最高裁とレモン・テストで上のような違いがあるのでしょうか?
ベクトルの向きが真逆ですよね?同じ政教分離の議論なのに…
そこが分かりにくい…
---次回へ続く---
2017年初回の更新となりました。
今年もよろしくお願いいたします。