玄人:じゃ、
・結論から書くのが何故難しいのか?
・どうすれば結論から書けるようになるのか?
について検討してみよう。
まず、
何故結論から書くのが難しいか?だ。
何故だ?
流相!
流相:え~、
一文が長くなるからかと思います。
玄人:それは大きな原因になるだろうな。
一文が長い文章は書いている本人も分からなくなっていくからな。
でも、ちゃんと理解していれば一文が長くなっても分かりやすい文章になるぞ!
たとえば、
隴西の李徴は博学才頴、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。<中島敦『李陵・山月記』(昭和44年、新潮文庫)8頁>
玄人:という、作家中島敦の文章がある。
流相:“中島らも”・・・ですか?
玄人:違う、流相!
“中島敦”
だ。昭和17年に34才という若さで亡くなった日本の作家だ。
国語の本に載っていなかったか?
流相:・・・
分かりません。
阪奈:私も分かりません。
神渡:私は知っています。
文章が漢文に近くてなんだか面白いと思いますよ。
玄人:分かってくれるか!
神渡:はい!
『李陵』
『名人伝』
『弟子』
とかも全部読みました。
玄人:おお~~!
若いのに見所があるじゃないか、神渡さん!
流相:・・・で、その中島敦さんが答案の書き方と関係するんですか?
玄人:お~っと、
脱線しそうだった。
上の文章は長いだろ?
流相:たしかに、長いですね。
玄人:でも分かりやすいだろ!
流相:そうですね。
玄人:ちゃんと論理が通っていれば長い文章であっても分かりやすいはずだ。
この文章は次の5つから成っている。
1 “隴西の李徴は博学才頴”だ。
2 “天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね”た。
3 “江南尉に補せられた”
4 “性、狷介、自ら恃むところ頗る厚”かった。
5 だから、“賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。”
つまり、
1 隴西(ろうさい)生まれの李徴(りちょう)は、非常に賢かった。
2 若くして科挙に合格し、
3 江南という地方の一役人になった。
4 しかし、協調性のない性格で、自信過剰であった。
5 だから、低い身分の官吏にとどまることを良しとしなかった。
と、まあこれだけの文章が一文で一気に書かれているわけだ。
でも分かりやすい文章になっている。
しっかりと考えて書かれてあるんだ。
主語は、
“隴西の李徴は”
だ。
そして、
・「博学才頴」
・「名を虎榜に連ね」
・「江南尉に補せられた」
・「性、狷介」
・「自ら恃むところ頗る厚く」
・「賤吏に甘んずるを潔しとしなかった」
は、全て主語が“隴西の李徴”なんだ。
論理的にも文法的にもがきちんと筋が通っている。
ということは、しっかり考えて書いた文章は長くても、分かりやすい文章になるわけだ。
長い文章が分かりにくいというのは書き手の問題なんだよ。
長い文章を書いていると、論理や文法がめちゃくちゃになってくる可能性が高くなるから、長い文章は分かりにくいんだ。
流相:たしかに、そうですが、ではどうしたら一文が長くても分かりやすい文章になるんですか?
玄人:それはだな・・・
---次回へ続く---