神渡: 殺人罪の構成要件というフィルターを通して捜査をしていかないと事実を解明できないですよね。
だから、早い段階で問題となりそうな構成要件をピックアップしておく必要があるのですね。
流相: 問題となりそうな構成要件のピックアップはどうすれば良いのでしょうか?
阪奈: それは当然、「法益」と関係するわね。
上場: そうですね。
ただ、ここも2段階に分けて検討した方が問題となる構成要件をピックアップしやすくなるでしょうね。
流相: ”2段階”に分けるんですか?
上場: そうです。
”Step 1”
どういう被害(利益侵害)が生じているのか?
”Step 2”
その利益は、刑法上どういう「法益」として保護されているのか?
という2段階に分けて検討するのです。
流相: 何故2段階に分けるのですか?
上場: それは・・・
・・・
では、流相君、そもそも「法益」とはなんのことですか?
流相: えっと、”法的利益”のことをいうような・・・
神渡: たしか、教科書では、”法律上保護に値する利益”と書かれてありました。
上場: そうです。
「法益」とは、”法律上保護に値する利益”のことなのです。
そうすると、
”Step 1”
”利益”侵害の有無
”Step 2”
その”利益”の刑法的保護の有無
で事案を分析することが必要となるのです。
流相: なるほど!
よく分かりました。
刑法って簡単かも・・・
阪奈: そんなに簡単じゃないと思うわよ。
上場: たとえば、流相君が飲食店に入ってオムライスを頼んだとしましょう。
オムライスを食べた後に財布を見たらお金が1円もなかったことに気がついたとします。で、店員に見つからないようにその店から逃げたとしましょう。
何罪の検討をしますか?
流相: そうですね。まずは”Step 1”に照らして、飲食店にどのような利益侵害があるかを検討します。
ここでは、飲食店は、代金を請求できないという不利益を被っています。
上場: そうですね。
ちなみに、代金請求権は財産的利益ですので、飲食店は財産的利益が侵害されていることになります。
流相: ”Step 2”として、財産的利益の刑法的保護の有無を検討します。
財産的利益は、個人法益でその利益侵害は財産罪として処罰されることがありますから、財産的利益は刑法的に保護されています。
上場: そういうことです。
上手く分析できています。
では、その上で、流相君に何罪の成立を検討しますか?
---次回へ続く---