富公: さて、この問題、平成25年度〔第2問〕〔設問1〕では、C県知事の本件定款変更の認可(本件認可)に処分性が認められるかどうかを検討する必要がありました。
いままで、本件認可の処分性を検討してきましたね。
最後に、簡単に筋を追ってまとめておきましょう。
どなたかお願いします。
流相: 頑張ってみます。
もし、つまずいたら、神渡さんの助け船をお願いします!
神渡: え?
えぇ・・・
流相: まず、処分要件該当性判断基準として、
・「公権力性該当性」
・「法効果」
・「国民」への法効果
・「個別的」法効果
・「直接性(ファイナル性)」
があります。
その要件に本件認可が該当するかどうかを検討します。
・土地区画整理法39条1項によれば、「都道府県知事」が組合の定款変更の認可をすると明示してあるから「本件認可」に公権力該当性は認められます。
・「法効果」も認められます。
・「国民」への法効果があるか?の部分で本件組合の法的性格が問題となりました。組合の賦課金徴収権限(土地区画整理法40条)や強制加入制(同法25条)により、本件組合は下級行政機関(行政主体)ということが分かりました。
ただ、賦課金の具体的な仕組みを分析した結果、土地区画整理法40条の過怠金制度や同法41条の滞納処分制度から、“行政主体”である本件組合を介して構成員(組合員)に対し個別的法効果が及ぶことが分かりました。
・C県知事が本件認可を行うことで、何の障害もなく組合員に賦課金支払義務が発生するという法的仕組みになっているといえますから、“ファイナル性”も認められます。
ということで、本件認可は取消訴訟の対象となる処分にあたる、という結論になりました。
富公: そうですね。
処分要件該当性判断基準をしっかりと理解していれば、あとは、個別行政法を読み解くことでこの問題は解けることが分かったでしょうか?
処分要件該当性判断基準が”法的枠組み”で、その”法的枠組み”に従って個別行政法を読み解いていく、という作業をすれば行政法は必ず解けると思います。
阪奈: ”法的枠組み”というのが道標となって、個別行政法を読み解いていくんですね?
富公: そういうことです。
ただ、闇雲に個別行政法を見ていても行政法は理解することができません。”法的枠組み”を理解すると言うことは、羅針盤を手に入れるということです。
個々の法律には、それぞれに固有の”法的枠組み”がありますから、その枠組みを理解することが個々の法律をマスターする近道です。
個々の法律に要求される羅針盤は、それぞれに特徴がありますから、その特徴を捉える勉強を心がけてください。
そうすれば、法律の学習は格段に進歩します。
流相: なるほどです。
なんか、自信が出てきました。
神渡: 行政法は難しいイメージがありましたが、どうすれば良いのかがよく分かりました。
富公: 今回の講義はこれで終わりましょう。
では、皆さん、また次回まで。
神渡: ありがとうございました。
阪奈: ありがとうございます。
流相: お疲れ様でした。
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