流相: 富平神社事件ね。
たしか、
市有地上に神社施設が存在する状態を解消するため、無償で使用させていた市有地を町内会に譲与したことの憲法適合性が争われていた(長谷部恭男「憲法判例百選Ⅰ[第6版]』(有斐閣、2013年)112頁)
流相:という事案でした。
阪奈: この事案に対して、最高裁は、
一回限りの作為的行為であるこの譲与に本件判決と同じ枠組みを当てはめて合憲とした(前掲「百選Ⅰ』112頁)
阪奈:のよね。
神渡: 単発的作為であった富平神社事件でも「目的効果基準」を使っていないわけですね。
何故でしょう?
払猿: そこは、先ほどの「目的効果基準」の射程から考える必要があるでしょうね。
神渡: たしか、払猿先生は、
単発的作為により、国家が宗教と関係してくる場面
神渡:を「目的効果基準」の射程だとしていたと記憶しています。
阪奈: ということは、「目的効果基準」が適用されるのは、次の2つの要件を充たす場合ということでしょうか?
(1)単発的作為であること
(2)国家が宗教と関係してくる場面
払猿: そうです。
流相: その2つを充たして初めて「目的効果基準」は適用される。
ということは、どれか1つでも充たさないと「目的効果基準」は適用されないと。
神渡: そういうことになりますね。
富平神社事件では、単発的作為が問題となっていましたから上の(1)は充たします。
にも関わらず、富平神社事件で「目的効果基準」が適用されなかったということは、上の(2)を充たさなかったということですよね?
阪奈: そうなるわね。
(2)国家が宗教と関係してくる場面ではないということね。
神渡: あっ!
たしか、富平神社事件では、
市有地上に神社施設が存在する状態を解消するため
神渡:に無償で使用させていた市有地を町内会に譲与した事件でした。
つまり、市有地の譲与は、国家と宗教とのこれまでの密接な関係を断つための行為ということですよね?
ということは、国家と宗教が関係を断つ場面であって、国家が宗教と関係してくる場面ではない、ということになりそうです。
流相: あぁ!
阪奈: だから上の(2)を充たさないと。
払猿: 私もそう考えています。
いろいろな見解がここではあるので、何が正解なのかは明らかではありませんが、一試論として可能な考えではないでしょうか?
流相: そうですね。
なんだか少しスッキリしました。
ところで、「目的効果基準」については、最高裁と学説とで考え方が大きく違いますよね?
どうしてなんでしょうか?前から気になって気になってしょうがなかったんです。
阪奈: 流相でも疑問を持つのね!
流相: 失礼だな!
考え出したらキリがないから疑問を持たないようにしているだけだよ。
阪奈: それって間違っているように思うけど…
流相: 効率重視で行くとそうなるだろ?
阪奈: “効率”ねぇ…
“急がば回れ”という諺もあるんだけどねぇ。
---次回へ続く---
今年最後の更新となりました。
更新が滞っており申し訳ありませんが、2017年度もよろしくお願いいたします。